古いクルマの廃車に補助金 ロンドンで新制度開始 最大約80万円の受け取りも可能に
公開 : 2023.01.31 06:45
英国の首都ロンドンで、新しい廃車支援制度が始まりました。ULEZの排出ガス規制に満たない車両を、低所得者や障害者が廃車・改造する際に最大約80万円を支給するというものです。
低所得者・障害者の乗り換え支援
英国のロンドン交通局(TfL)は1月30日、排出ガス規制を満たさない車両の廃車、または改造の補助金として最大5000ポンド(約80万円)を支給する新制度の導入を発表した。
ロンドンでは大気汚染の改善を目的として「ULEZ」と呼ばれる超低排出ゾーンを設定しており、指定区域内を通行する車両に対して排出量の厳しい制限を設けている。汚染度が高いと見なされる車両(特に年式の古い車両)には、通行料金の支払いが求められる。
今年8月には指定区域を拡大し、ロンドンの全32区がULEZ対象となる予定だ。今回の新制度は、これに先立ってULEZ非対応車の廃車や改造を後押しする目的で、1億1000万ポンド(約177億円)の予算を基に導入された。
低所得者や障害者向け給付金を受給しているロンドン市民で、現在の車両がULEZの基準に適合していない人を対象としている。
車椅子用のクルマの所有者は、廃車または改造のために最大5000ポンド、標準的なクルマの所有者は最大2000ポンド(約32万円)を受け取ることができる。バイクの所有者は、廃車費用として最大1000ポンド(約16万円)を受け取ることができる。
ULEZ非対応車を改造する場合は、触媒還元技術によってNOx(窒素酸化物)の排出量を減らすか、エンジンを欧州排出ガス規制「ユーロ6」適合のものに換装するか、完全に電気駆動にする必要がある。
また、別のオプションとして、市内を走るバスおよびトラムの大人用年間パスを1枚または2枚受け取るという選択肢もある。
ロンドンを拠点とする個人事業主、登録慈善団体、零細企業(従業員10人以下)は、商用車の廃車・改造の補助金として5000ポンドから9500ポンド(約150万円)を受け取ることができる。
いずれの制度も、ロンドン市内に居住し、前回のTfL廃車制度で補助金を受けたことがないことが条件となる。前回の制度では、1万5000台が廃車になったという。
また、申請者の条件としてユニバーサル・クレジット(低所得層向けの給付制度)、介護手当、児童税額控除、所得控除、求職者手当など、さまざまな手当のうち1つ以上を受給していることが必要だ。
車両に求められる条件としては、DVLA(運転免許庁)に登録され、道路交通税の支払い、自動車保険に加入していることが挙げられる。また、本制度が開始される日(2023年1月30日)より12か月以上前から所有していることも条件となる。
現在、ロンドンのULEZ指定区域内を通行するには、排出ガス基準を満たすか、12.50ポンド(約2000円)を支払うことが義務付けられている。24時間365日適用され、2023年8月29日にはすべての行政区に拡大される予定だ。
ロンドンのサディク・カーン市長は最近、このULEZ拡大を再考するよう圧力を受けており、ロンドン郊外の19の自治体(カウンシル)のうち11の議会が懸念を表明している。中には、生活費の上昇に伴い、さらなる対策が必要として、拡大を阻止するための法的措置を検討しているところもある。