ロールス・ロイス・エンジンで対抗 ヴァンデンプラ 4リッターR ジャガーSタイプ 3.4 最高峰のサルーン 後編

公開 : 2023.02.18 07:06

ジャガーが有能なSタイプを発売すると、BMCはロールス・ロイスのエンジンで対抗。往年のビッグサルーンを英国編集部がご紹介します。

重役気分を味わえる上質なインテリア

今回ご登場いただいたヴァンデンプラ・プリンセス 4リッターRは、1966年式。ロバート・ヒューズ・オートモビルズ社が新しい買い手を探しており、走行距離は10万6200kmほど。

状態は見事で、2021年のヴァンデンプラ・オーナーズクラブ・コンクールでは、クラス優勝を掴んている。上半分がブラック、下半分がカールトン・グレイに塗られたボディが眩しく輝く。

ダークグリーンのジャガーSタイプ 3.4と、ブラックとグレーのツートーンのヴァンデンプラ・プリンセス 4リッターR
ダークグリーンのジャガーSタイプ 3.4と、ブラックとグレーのツートーンのヴァンデンプラ・プリンセス 4リッターR

オースチン・ウェストミンスターやウーズレー 6/110と基礎を共有することを示すように、ボディの幅は狭い。ベントレーを意識したようなフロントマスクが、堂々とした佇まいを演出している。ヘッドライトと補助灯、ウインカーの配置も整っている。

後ろへ回ると、同時期のメルセデス・ベンツにも似た、水平に長いテールライトが風格を漂わせる。柔らかいカーブを描くホイールアーチや、控えめなテールフィンなどは、ロールス・ロイスにも通じる処理といえる。

ドアを開くと、心地良い香りで出迎えられる。中央にアームレストが備わる、レザー張りのフロントシートは美しく、ウッドベニアの艶も深い。スイッチ類も上品に並び、居心地に優れる。

ダッシュボードのデザインは、初期のロールス・ロイス・シルバーシャドーへ通じる。巨大なステアリングホイールが膝の上に伸びる。冷間時の始動用チョークは手動式だ。

リアシート側の空間は、前後長でゆとりがある。折りたたまれたピクニックテーブルを展開すれば、重役気分を味わえる。リムジンと呼べるほど、広々とはしていないが。

安定した高速クルージングこそ得意分野

究極の滑らかさを実現するべく、ボルグワーナー社製の3速オートマティックにはD2という1速を使わないモードが備わる。トルクコンバーターでいなし、シフトアップの回数を減らすことが可能だ。

確かに、低速域では滑らかに走る。アクセルペダルを深めに倒すと、若干ギクシャク感が出るから、穏やかに運転したいところ。コラムシフトは正確に動き扱いやすい。

ヴァンデンプラ・プリンセス 4リッターR(1964〜1968年/英国仕様)
ヴァンデンプラ・プリンセス 4リッターR(1964〜1968年/英国仕様)

洗練されたエンジン音が低く響くが、アクセルペダルへの反応は重苦しい。0-97km/h加速を12.7秒でこなすとを、実感させない。恐らく燃費は、ジャガーSタイプ 3.4のオートマティック版と同等だろう。

高速道路に出れば、130km/h前後の速度域で流暢に走れる。安定した高速クルージングこそ、プリンセス 4リッターRの得意とする分野。フロントがディスク、リアがドラムのブレーキはしっかり効き、減速時のバランスも悪くない。

コーナーではアンダーステアが抑えられ、扱いにくいことはないものの、操縦性で優れるわけではない。パワーステアリングを装備し、ロックトゥロックは2.6回転とクイックながら、精度は今ひとつ。能力は高そうだが、おおらかだ。

ステアリングホイールには、フロントタイヤがどんな状態なのか、殆ど感触が伝わってこない。意欲的なスピードで運転する自信は得にくい。少なくとも駐車時は軽く手を回せるけれど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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