BMW X1 詳細データテスト 高級感と広さは満足 走りと車格は不釣り合い ナビも改善の余地あり

公開 : 2023.02.04 20:25  更新 : 2023.03.05 02:19

走り ★★★★★★☆☆☆☆

最新世代のモデルで、BMWは23iの名を復活させた。もはや驚くことではないが、直6エンジンを指すものではない。X1のガソリンエンジン車最強パワートレインは、2.0L直4ターボで、マイルドハイブリッド化されている。218ps/36.8kg-mを発生し、7速DCTとクラッチ式4WDシステムが組み合わされる。コンパクトなファミリーカー向けSUVとしては、有り余るスペックだ。

テストコースでは、0-97km/hが6.4秒、0-161km/hが17.2秒。4速での48-113km/hは9.2秒と、この手のクルマとしては十分以上に速い。しかし、感覚的にはそう感じられない。原因は、まずエンジンそのものにある。中速トルクが軽く、かなり回さないとおいしいところを使えないのだ。

客観的な速さは十分だが、回転を上げないと力の足りないエンジンが、その速さを感じさせない。また、ギアボックスのフィールや使い勝手にも難がある。
客観的な速さは十分だが、回転を上げないと力の足りないエンジンが、その速さを感じさせない。また、ギアボックスのフィールや使い勝手にも難がある。    MAX EDLESTON

これがポルシェ911GT3であれば、高回転型エンジンも楽しいが、ファミリーカーのクロスオーバーだとそういうわけにはいかない。また、とりわけ音が楽しいエンジンでもなく、いかにも無理矢理パワーを上げた4気筒といったノイズがやかましい。合成音を発生するアイコニックサウンドをオンにすると不快さは軽減されるが、単純に音量が増してしまうことにもなる。

しかし、それ以上によろしくないのがギアボックスだ。この手のクルマは、誰もがMTで乗れたらいいのにと思うような類のものではない。しかしながら、先代に積まれたスムースな8速トルクコンバーターATが、7速DCTに置き換えられたのは悔やまれる。われわれとしては、BMWのミステイクだと言いたい。

低速での取り回し時には変速をためらう上にショックが大きく、方向転換のたびに完全制止が必要になる。クラッチがどこで繋がるか確信することはできず、タイトな駐車スペースでは緊張を強いられる。上り坂では、それがとくに顕著だ。

走行中も繊細さが足りず、エンジンをギクシャクさせる。レッドゾーンまで回してしまいがちだが、期待するような回し方をしてくれることは決してない。Pレンジはなく、その代わりにパーキングブレーキのスイッチを使うことになるので、当然ながら望まなくてもブレーキがかかってしまう。

そのため、Nレンジのまま、もしくはサイドブレーキをかけずにエンジンを切ることはできない。万一バッテリーが上がってしまった際などには、フラストレーションを感じることになりそうだ。

マニュアルモードでのパドル操作に対する反応は上々だが、それを使うユーザーはさほど多くないのではないかと思われる。X1のPHEVはまだ試乗していないが、メカニズムを共有する2シリーズ・アクティブツアラーでは、強力な電力アシストがギアボックスの落ち度を補っていた。

遠からず25eや30eが追加される見込みだが、燃料タンクのある安心感を求めるユーザーにはおすすめしたい。EVのiX1は、プリプロダクションモデルをドイツで試乗した限りでは好印象だった。X1のラインナップで、ベストモデルになる可能性は十分にある。

ブレーキはすばらしい。バイワイヤシステムながら、効き具合の高まり方は良好。湿った路面では、113km/hから61.0mで完全停止したが、これは同じようなコンディションでテストした、よりスポーティだが重いスコダ・コディアックvRSに近い結果だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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