ポルシェ・ケイマンGTS
公開 : 2014.09.15 23:40 更新 : 2017.05.29 19:04
■どんな感じ?
今のところ、2014年にデビューしたクルマの中ではベスト・スポーツカーだと言える。981型のケイマンがデビューして以来、折に触れて褒め続けてきた筆者は、そこいらのジャーナリストよりも深くその愉しさや正確性について理解しているつもりだ。しかしながら、ケイマンGTSはとにかく凄いのだ。
ただし£55,397(967万円)という価格は、パフォーマンスの度合いよりもむしろ、質感の高さゆえであると考えるべきである。少し冷静になってみればわかるのだが、結局のところこの価格はBMW M4とほぼ同価格帯に位置する。だけれどもM4の方が0-100km/hタイムは速いし、現実的に山を走らせても、ツインターボによるトルク供給のおかげでM4の方が先にゴールへと辿り着くはずだ。
しかし速いだけが魅力でないのも一理。ケイマンGTSの研ぎ澄まされたハンドリングや、うっとりするようなエンジン音、力強さには玄人を唸らせる依存性がある。ブリッピングをして、1つ下のギアに落とし、7800rpmまでエンジンを回せば、誰だって美しいエンジン・サウンドの旋律に酔いしれるに違いない。
確かに唖然とするほどの速さはない。しかしながら、アップダウンやコーナー、オーバーテイクなど全ての所作が実に色彩豊かなのだ。ペダルの重さ、シフト・フィール、ブレーキの感覚、ひとつひとつに曖昧な部分は全くなく、それら全てが見事にバランスし合い、まるで美しいハーモニーを奏でる管弦楽団を目の前にするようにピンと背筋をのばしてしまう緊張感がある。エルゴノミクスのレベルの高さもドライバーを痺れさせるポイント。世界中どこをさがしても、これほどヒール・アンド・トゥに適したペダル配置を持ったクルマは無いはずだ。
走りだせば、低速トルクのおかげでギアの選択に迷うことはないだろし、加えてステアリングが正確であることから、無意識にドライビングに没頭することになるはずだ。乗り心地は硬い部類ではあるが、不快に感じることはない。ボクスターGTSでは、著しく荒れた路面によって構成されるコーナーでは微振動を感じることがあったが、ケイマンGTSでは見事に制振されている。
横方向の身のこなしも、もはや畏敬レベル。ボディ・ロールはほとんど気にすることは無いレベルまで抑えこまれ、ドライバーはどのようなラインを選択するかのみを考えるだけでいい。またかなりのグリップの高さにも何も気にすることなく身を委ねることができるだろう。ステアリング・レスポンスとその正確性はもはや世界最高峰だ。
縦方向の身のこなしはといえば、ミド・エンジン車特有のそれ。不快なピッチングやダイブはなく、うねりの伴う路面でも高速道路を走るのに似た快適性がある。ブレーキで荷重移動する際にはコントロールが難しくなるほどサスペンションが柔らかいわけではなく、コーナーの最初から最後まで微修正可能なエンターテイメント性溢れる仕立てとなっている。