新次元の疾走体験 ポルシェ911 ダカールへ試乗 ベースは479psのカレラ4 GTS 前編
公開 : 2023.02.04 08:25
50mm増しのサスに専用のオフロードタイヤ
車体へ話題を移すと、ボディシェルと3.0Lの水平対向6気筒ツインターボ・エンジン、8速デュアルクラッチ・オートマティック(PDK)は、カレラ4 GTSと基本的に同一。ダカールの場合は、7速MTは選択できない。
最も大きな変更を受けているのが、50mm車高が増やされたサスペンション。ズブズブ沈んでいくような砂地を走る場合に備えて、最大80mmまで持ち上げることもできる。
過酷なオフロードを走破するには、有能なタイヤも欠かせない。オールテレーン・タイプは、一般的にはスポーツカーへ装着されないため、ポルシェはピレリにダカール専用品をオーダーしている。
タイヤの構造体となるカーカスは二重に巻かれ、極めてパンクしにくいという。ポルシェによると、鋭い岩がゴロゴロとある砂漠で何日もテスト走行を重ねたが、交換に迫られたのは2本で済んだらしい。
そのダカール専用のピレリ・スコーピオンはサイドウォールが分厚く、ホイールサイズは、カレラ4 GTSの標準から1インチ落とされている。すると、GTS用のブレーキが干渉するため、カレラS用のひと回り小さいディスクが装備されている。
カーボンセラミック・ブレーキのオプションも、ダカールでは選べない。もっとも、オンロードでの最高速度はタイヤの性能を踏まえて239km/hへ制限されるため、制動力が足りなくなることはないだろう。
ドライブモードへ悪路用の2種を追加
ドライブモードには、オフロードでの走破性を高めるべく、新しく2種のモードが追加された。その1つがオフロード・モード。通常は前後でほぼ50:50にエンジンのトルクが割り振られ、トラクションが最大化される。必要に応じて自在に分配も可能だ。
もう1つがラリー・モード。こちらの方が筆者好みだった。積極的にリアタイヤ側へトルクが伝達されるようになり、砂利道などを意欲的に走れる。
ダカールの能力を高めるべく、ボディ各部にも手が加えられている。ボンネットは911 GT3用のカーボンファイバー製で、エンジンマウントも同様。リアシートは省かれ、バッテリーは軽量なものに置き換えられ、ガラスは薄肉化された。
アンダーボディ・プロテクションとカーボン製のリアウイングは、ダカールの専用アイテム。フロントオーバーハングと路面との角度、アプローチ・アングルを深くするため、ラジエターの位置も変更されている。
オンロードでも走りをバックアップする、アクティブ・アンチロールバーと後輪操舵システムは標準装備となる。ポルシェが、真剣にダカールを開発したと理解できる内容だ。
それでは、実際に走ったらどうなのか。筆者がダカールの試乗場所として招かれたのは、アフリカ大陸の北西部に位置するモロッコ。アルジェリアとの国境に近い、画に書いたような砂漠地帯だった。
この続きは後編にて。