新次元の疾走体験 ポルシェ911 ダカールへ試乗 ベースは479psのカレラ4 GTS 後編

公開 : 2023.02.04 08:26

ポルシェ911の所有体験に新しい次元

広大な砂丘を横断する必要があるなら、そのままステアリングホイールを握り疾走すればいい。高い速度域を保ちながら、猛然とダカールは駆け抜けるはず。クルマの限界を迎える前に、ドライバーの精神が燃え尽きてしまいそうだが。

弱点もゼロではない。着座位置が低いため、周囲の状況を見渡すことが難しい。でも、他には思い浮かばなかった。

ポルシェ911 ダカール(欧州仕様)
ポルシェ911 ダカール(欧州仕様)

ポルシェは、ダカールをアフリカや中東地域で販売していない。技術者が意図した環境を、実際に走る機会は少ないといえる。

当初は、お金持ちのおもちゃのような、ファッション重視の911だと考えていた。しかし、ひとしきり体感して考えを変えた。厳しい環境に住んでいる人や、ウインタースポーツを毎年の楽しみにしている人にとっては、最高のポルシェかもしれない。

派手なカラーリングに目が行きがちだが、落ち着いた塗装色でサマータイヤやスタッドレスタイヤを履く姿なら、違う印象を受けるはず。911は、世界で最も日常使いしやすいスポーツカーの1台といえる。そのダカールは、最も多用途な仕様といえる。

パリ・ダカール・ラリーとは、直接的な関係性はないかもしれない。だとしても、ポルシェ911の所有体験に、新しい次元が追加されたことは間違いないだろう。

番外編:リフトシステム付きの専用サス

ポルシェ911 ダカールのサスペンションには、車高を30mm持ち上げる機能的なリフトシステムが備わる。前後アクスルで同時に車高が高くなるため、一般的なノーズリフト・システムのように空力的なデメリットが大きくは生じない。

ポルシェは、走行速度が175km/h前後を超えると自動的に低くなるよう設定しているが、それは空気抵抗などが理由ではない。ピレリ・スコーピオンが、オフロードを許容できる限界の速度なのだという。

ポルシェ911 ダカール(欧州仕様)
ポルシェ911 ダカール(欧州仕様)

前後同時に1610kgの911 ダカールを持ち上げるため、リフトシステムには高圧のアキュムレータが用いられた。圧力は、110barから135barへ強化されている。

最低地上高は、リフトシステムを機能させない状態で161mm。機能させると191mmへ増すが、それにより、SUVのポルシェ・カイエンと同等のブレークオーバー・アングル、ホイールベース間で峰を越えられる角度を得られる。その走破性は確実に高い。

ポルシェ911 ダカール(欧州仕様)のスペック

英国価格:17万3000ポンド(約2768万円)
全長:4530mm
全幅:1864mm
全高:1338mm
最高速度:239km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:256g/km
車両重量:1610kg
パワートレイン:水平対向6気筒2981ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:479ps/6500rpm
最大トルク:57.9kg-m/2300rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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