R8へ迫る走りを4ドアで アウディRS7(初代) 560psに実用性を融合 英国版中古車ガイド

公開 : 2023.02.26 08:25

R8の4ドア版が欲しいとお考えなら、RS7がその候補になるとする英国編集部。初代の魅力を中古車で振り返ります。

サルーンの車内空間にスーパーカー級の走り

スタイリッシュでありながら、優れた実用性と高い走行性能を両立させた例ほど、魅力的なモデルはないだろう。アウディR8級の走りに、日常的な使い勝手を求めるなら、RS7 スポーツバックという選択肢がある。

サルーンと同等の車内空間にスーパーカーへ迫る走りを融合し、クーペ風ボディをまとうRS7は、従来的なモデルの存在意義を危うくする。快適に大柄な大人4名を移動させながら、0-100km/h加速を3.9秒でこなせるのだから。

アウディRS7 スポーツバック(初代/2013〜2018年/英国仕様)
アウディRS7 スポーツバック(初代/2013〜2018年/英国仕様)

最高速度は、形式的に249km/hでリミッターが掛かる。しかし、新車当時に1500ポンドのオプションを支払えば、304km/hまで引き上げることが可能だった。

低く滑らかなボンネットに収まるのは、休日の早朝に真価を発揮させるのにふさわしい、4.0LのV型8気筒ツインターボ・エンジン。当時のベントレー・コンチネンタルGTとベースを共有し、560psの最高出力と71.2kg-mの最大トルクを叩き出す。

この数字は、同時期のメルセデス・ベンツCLS 63 AMGより50ps以上もパワフル。BMW M6をも上回る。現在でも、これ以上の動力性能が必要になる場面はないはず。

もっとも、RS7の場合は急がずとも実力が表面に表れている。アウディR8と同様に、駐車場に停まっているだけで速く走りそうなスタイリグは大きな魅力。風洞実験で形状を煮詰めたような容姿は、とても印象的だ。

アウディらしく高品質なインテリア

そんな注目度の高い初代RS7だが、欧州で販売が始まったのは2013年。2015年にフェイスリフトを受け、ヘッドライト・ユニットが新しくなり、バンパーの造形がシャープになった。

インテリアはアウディらしく高品質。日常的に触れる場所にはレザーが惜しみなく用いられ、殆ど触れないようなプラスティック製パネルもソフトタッチ加工されている。バング&オルフセンのオーディオシステムも、オプションで用意されていた。

アウディRS7 スポーツバック(初代/2013〜2018年/英国仕様)
アウディRS7 スポーツバック(初代/2013〜2018年/英国仕様)

当時のモデルらしく、ダッシュボードには実際に押せるハードボタンが多く、インフォテインメント用モニターは小さく解像度も荒い。内装のデザインは年代を感じさせる。

郊外の一般道でムチを入れれば、10年前のモデルなことはすぐに忘れるはず。アウディのレン・シュポルトという称号を与えられるだけあって、四輪駆動システムが生むトラクションで走る道を選ばない。

知的なトルクベクタリング・システムのおかげで、シャシーの限界に迫っても安定性は失われにくい。ただし、ステアリングホイールには殆ど路面の感触が伝わらない。コーナーでの充足感は、高いとはいえないだろう。

RS6 アバントという兄弟モデルが存在し、実用性では及ばない。RS7は滑らかにカーブを描くルーフラインの影響で、荷室は少々狭い。それでも、リアシート側の空間に不足はない。大きなリアハッチを開けば、家族旅行に充分な容量の荷室が広がる。

スタイリッシュで実用的で、すこぶる速い初代アウディRS7 スポーツバック。R8の4ドア版として、内燃エンジン時代の終わりに楽しむのも悪くはないはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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