運転の邪魔にならないタッチスクリーン HUDとの融合で安全性向上 各社で開発競争

公開 : 2023.02.06 18:45

タッチスクリーンは便利な装備ですが、ドライバーの注意散漫を招くケースもあります。ボルボやBMWは、HUD(ヘッドアップディスプレイ)との融合によって安全性と機能性を高めようとしています。

タッチスクリーンの弱点克服へ

自動車業界は、ドライバーとクルマを結ぶインタラクションについて、完璧な(時には半端な)答えを見つけようと苦心している。

クルマが多機能化する中で、タッチスクリーンは無数の物理的操作系(ボタンやダイヤル)による複雑さを軽減しているが、ドライバーの注意散漫の原因になってしまうこともある。しかし、HUD(ヘッドアップディスプレイ)を採用することで改善できるのではないだろうか。

BMWはコンセプトカー「i Vision Dee」に搭載されたHUDを、2025年に市販車へ搭載する計画だ。
BMWはコンセプトカー「i Vision Dee」に搭載されたHUDを、2025年に市販車へ搭載する計画だ。    BMW

HUDは、多くの高級車や上級モデルが搭載しているものの、標準装備されるべき重要な機能というよりは、まだ単なるギミックのようなものでしかない。車載用HUDは30年前から存在しているが、機能としては速度表示や簡単なナビゲーションといった基本的なものにとどまる。

一部にAR(拡張現実)ディスプレイを採用した車種もあるが、それよりもはるかに進んだ新技術が実用化を控えている。

ボルボやBMWは、ARフロントガラスの計画を発表しており、自動車部品サプライヤーであるコンチネンタルは、フロントガラスの底面を横切るフルワイドHUDを披露している。

ボルボ・カーズのベンチャーキャピタル投資部門であるボルボ・カーズ・テックファンドは、イスラエル企業スペクトラリックス(Spectralics)の株式を取得した。この会社は、ガラスに画像を重ね合わせることができる「多層薄型コンバイナー」を開発した。フロントガラスに内蔵することで、プロジェクターなしで全画面型HUDを実現するというものだ。

BMWは、先日CES 2023で公開したコンセプトカー「i Vision Dee」のフルワイドHUDを、2025年に市販車に搭載するとしている。

では、タッチスクリーン(およびその他の操作系)は、フルワイドHUDに移植したり、統合したりできるのだろうか? 例えば、インテルのハンドトラッキングステム「Realsense」のようなジェスチャー関連技術を使えば、HUD上にタッチスクリーンをゴースト表示させ、乗員の手の動きで操作できるようになるかもしれない。

従来の静電容量方式のタッチスクリーンにおいても、タッチスクリーンに対する指先の位置をカーソルとして表示することができるかもしれない。そうすれば、ドライバーは道路から目を離さずに操作できるし、同乗者もタッチスクリーンを使うことができる。また、ステアリングホイールの一部をラップトップ風のトラックパッドとして使用することも可能だ。トラックパッドに触れると、視線の先にゴーストボタンが表示され、ドライバーが下を向いてしまう危険性を回避するのだ。

現在のインターフェース技術の多くは、スマートフォンやパッドなどのデジタル機器からクルマへの移行がうまくいっていないが、これらを同期させることで、状況を改善することができるかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事