【現実の環境でテスト】メルセデス・ベンツEQS 450+ 一般道/高速道路/峠道で検証

公開 : 2023.02.06 19:05

8kW充電器でも6.6kWh?

さて、山梨県甲府市と神奈川県川崎市往復を含む1週間での走行距離は285kmであった。この間、何れもポルシェの8kWhの充電器で3回の充電を行ったが、制限があるのか6kW+しか流れず、それなりの時間がかかってしまった。

当初、我が家に来た時はオドメーター3589km、バッテリー残量85%、466km走行可能の充電状況であった。早速、充電をスタートさせると、31.0-31.5A(本来40A)しか流れず、従って、満充電まで約4時間(243分)かかってしまい、また、満充電時の走行可能距離は542km(最大627km)と表示された。

あくまでも推定に過ぎないが、合計消費電力は約90kWh程度であり、1kWhの料金を20円とすれば1800円に過ぎない。
あくまでも推定に過ぎないが、合計消費電力は約90kWh程度であり、1kWhの料金を20円とすれば1800円に過ぎない。

広報車であるから、前の試乗者がどのような走りをしたのかは不明だが、カタログデータの700kmからすると、冬場で、ヒーターを多用していることを考慮すれば、妥当なところだと思われる。

2回目の充電は、甲府まで中央道を使って112km走った後に行った。この行程は高低差が最大600m(最高は笹子トンネルの670m)あり、最終的には標高284mに位置する信玄の湯 湯村温泉まで220mほど上昇するので、平坦路を走るよりも電費は悪くなる。

加えて、予想よりも遥かに楽しいドライブフィールで気持ちよくアクセルを踏んだこともあり、到着した時の走行可能距離は329km、65%残まで減少していた。何と112kmを走るのに213km分を消費したことになり、冬場で登りという悪条件が重なれば、これほどの数値になってしまうのか、と愕然とした。

因みに、途中、一番気になったのはエアコンのブロアー音で、最小の風量でも煩く何とかならないかと感じた。また、スポーツモードでは、AMG仕様のような音色の走行音が流れるが、それも、ブロアーの音でかき消されるほどであったのはいただけない。

甲府での充電もやはりポルシェの8kWhで行ったが、ここでも6.6kWhしか流れず、満充電までに6時間20分程かかった。満充電時の新たな走行可能距離は498km(最大620km)と表示された。

3回目の充電は、撮影やワインディングのテストなどで山梨県北部の高原地帯を走った後、中央道を川崎まで帰ってきた直後に行った。この間の走行距離は172kmであったが、表示されている残走行距離は498kmから281km(最大336km)、54%残に減少していたので、217kmの消費となり、下りの多い帰路の方が大きく改善されていた。

恐らく、ワインディングの走行が無ければもっと良くなっていたと思う。満充電までは、8時間強かかり、新しい走行可能距離は522km(最大619km)まで復活した。

あくまでも推定に過ぎないが、合計消費電力は約90kWh程度であり、1kWhの料金を20円とすれば1800円に過ぎず、安価なことは間違いない。

条件つきでお勧め車種に

このEQS 450+の車両本体価格は消費税込みで1578万円である。

試乗車自体はこれにオプションが3点装着されており、それぞれ、リアコンフォート・パッケージ34万8000円、エクスクルーシブ・パッケージ12万3000円、デジタルインテリア・パッケージ105万円である。したがって合計金額は1730万1000円となる。

ポルシェ・タイカン以外はお勧めしなかったが、EQSを試乗し終えた現在、このクルマも選択肢に入ってくると確信した。
ポルシェ・タイカン以外はお勧めしなかったが、EQSを試乗し終えた現在、このクルマも選択肢に入ってくると確信した。

因みに、試乗車の印象的なノーテックブルーのボディカラーは標準色の中に存在するので追加の費用はかからない。

メルセデスのSクラスで、この金額はむやみに高いとは思わないし、クルマ自体もよくできていて、EVになった新しいSクラスの世界を実現していると思うが、ユーザーにとっての不満は、メルセデス・ベンツ日本が、自宅などの充電設備に6kWhの充電器しか用意していないことであろう。

107.8kWhものバッテリーを搭載したクルマを発売するのなら、せめて、8kWh以上の充電器が必要であり、富裕層向けなら尚更なことは言うまでもない。また、6kWhまでの充電制限も外してほしい。

この点、インフラ整備にも熱心なポルシェとは対照的だとおもう。是非とも早急な対策をお願いしたい。

先日、ポルシェやフェラーリを所有し、足としてSクラスを使用している知り合いから、EVでSクラスに代わるお勧めのクルマはどれか、と聞かれた。

その時は、タイカン以外はお勧めしなかったが、EQSを試乗し終えた現在、このクルマも選択肢に入ってくると確信したのである。

但し、充電環境、すなわち、大容量の充電器に対応が可能なら、という条件つきで。

記事に関わった人々

  • 執筆

    笹本健次

    Kenji Sasamoto

    1949年生まれ。趣味の出版社ネコ・パブリッシングのファウンダー。2011年9月よりAUTOCAR JAPANの編集長、2024年8月より総編集長を務める。出版業界での長期にわたる豊富な経験を持ち、得意とする分野も自動車のみならず鉄道、モーターサイクルなど多岐にわたる。フェラーリ、ポルシェのファナティックとしても有名。

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