極めて高耐久のTdi ランドローバー・ディスカバリー(初代) 英国版クラシック・ガイド 前編

公開 : 2023.02.25 07:05  更新 : 2023.03.07 08:36

ディフェンダーとレンジローバーに次ぐヒット作。価値あるクラシックになりつつある初代を、英国編集部が振り返ります。

レンジとディフェンダーのギャップを埋める

35年ほど前、初代レンジローバーは高級志向へシフトする一方で、ディフェンダー 90と110は質実剛健な働くクルマというポジションを変えていなかった。それを横目に、三菱いすゞは両車の中間に位置するようなSUVを販売していた。

ランドローバーは、モデルのギャップを埋める必要があった。そこで進められたのがプロジェクト・ジェイ。サスペンションを簡略化したレンジローバーのシャシーを流用し、特徴的なデザインのボディを載せた、7シーターのSUVが誕生することになる。

ランドローバー・ディスカバリー(初代/1989〜2004年/英国仕様)
ランドローバー・ディスカバリー(初代/1989〜2004年/英国仕様)

ルーフラインは後部が一段高く、サイドの上部にはアルパイン・ウインドウと呼ばれる天窓が開けられた。大きなフロントガラスとフロントドアの骨格も、レンジローバー譲り。荷室側には折りたたみ式の簡易シートが2脚、横向きに搭載されていた。

ボディサイズは初代レンジローバーより長く高く、剛性を確保するため、スチール製のインナー・ボディシェルにルーフ構造を溶接。そこへ、シャープにプレスされたアルミニウム製ボディパネルがボルトで固定された。

インテリアを手掛けたのは、コンラン・デザイン・グループ。巧妙に小物入れなどがレイアウトされ、高評価を得た。当初の内装色はライトブルーのみの設定だったが、発表の翌年にはベージュも選べるようになっている。

スタイリングは、社内デザイナーによる共同で仕上げられた。結果として、レンジローバーやディフェンダーとは異なる位置づけのSUVとして、ディスカバリーは大きな成功を掴んでいる。

好燃費で信頼性も高いディーゼルターボ

ディスカバリーの人気を高めた要因の1つが、ランドローバーが開発を進めていた、Tdiと呼ばれるターボ付きのディーゼルエンジン。好燃費でトルクフルで、信頼性にも優れ、V8ガソリンの有力な代替ユニットになった。

シフトレバーの動きは重かったものの、試乗評価も概ね好評といえた。「ディスカバリーはお値打ちの1台。秀でたセンスと実用性、英国車らしさが完璧に近い形で融合しています」。と、V8エンジン版を当時のモーター誌はまとめている。

ランドローバー・ディスカバリー(初代/1989〜2004年/英国仕様)
ランドローバー・ディスカバリー(初代/1989〜2004年/英国仕様)

1998年、スタイリングはキープコンセプトながら、大幅なメカニズムの改良が加えられたディスカバリー・シリーズ2が登場。デフロックできる本格的な四輪駆動システムは継承しつつ、ライバルモデルとの競争力を向上させていた。

新開発の5気筒ディーゼル・ターボエンジンが加わり、セミアクティブ・アンチロール機能を上級グレードに採用。リアにはエアサスペンションがおごられ、電子制御のトラクション・コントロールとヒルディセント・コントロールも獲得している。

ボディサイズを拡大しつつ、剛性は向上。フロントライトのデザインが一新され、テールライトの位置が高くなったほか、ドアハンドルなど細部もアップデートされていた。

多彩なオプションで差別化を図れる、パーソナライゼーションも英国では人気だった。車両価格の50%の追加費用を支払うことすら可能で、アンチロールバーにワイドなタイヤを組み合わせられる、ハンドリング・パッケージも用意されていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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