真冬にサマーフェス気分 フォルクスワーゲンID.バズで海岸線を目指す 次世代の小さなバス 前編

公開 : 2023.02.18 09:45

BEVとして蘇ったVWタイプ2。数か月後のサマー・フェスティバルを想像し、英国編集部が南西部のリゾート地を訪ねました。

次の世代の幕開けを表現する小さなバス

例えば、クルマの連想ゲームをしてみる。サーキットという言葉には、フェラーリポルシェといったメーカーが結び付く。アウトバーンなら、BMWアウディだろう。逆にロールス・ロイスベントレーなら、高級リムジンかもしれない。

それでは、サマー・フェスティバルとイメージが重なるクルマは? 恐らく、1960年代に人気を博したフォルクスワーゲン・タイプ2、通称ワーゲンバスがその1台へ該当するはず。

フォルクスワーゲンID.バズ(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ(英国仕様)

2枚に別れたフロントガラスに、観音開きのサイドドア。ベンチシートを展開すれば、ベッドになる。ファンキーな音楽を聞きながら湖畔でバーベキューを楽しむような、夕暮れのアウトドアがこれほど似合うクルマは他にあるだろうか。

第二次大戦後の荒廃したドイツで1950年代に誕生したタイプ2は、新たな時代の自動車として世界中で支持を集めた。反戦や自由主義、ロックフェスの元祖といえるウッドストック・フェスティバルといったイメージを織り交ぜながら。

そして化石燃料からの脱却が進む今、フォルクスワーゲンの小さなバスが、次世代の幕開けを表現するかように登場した。ディーゼルエンジンの不正問題など、近年の同社には好まくないニュースも少なくなかった。最近のモデルも、どこか個性が薄い。

フォルクスワーゲンのCEOに就任したトーマス・シェーファー氏は、「再び愛されるブランド」を目指すと発言している。バッテリーEV(BEV)の小さなバスは、その旗振り役だ。

エモーショナルなブランド像をカタチに

現在、自動車業界は大きな変革期にある。BEV戦略に駆動用バッテリーの確保、インフォテインメント・システムとタッチモニター、人工知能に自律運転。ID.バズは、これらを網羅した再発明といえ、ブランド・アイデンティティを自ら再認識する役目も担う。

ただし、称賛すべき新技術を搭載していても、必ずしもクルマへ愛着を抱けるわけではない。シェーファーが目指すブランド像を醸成することは、簡単とはいえない。

フォルクスワーゲンID.バズでコーンウォール州ニューキーを目指した旅の様子
フォルクスワーゲンID.バズでコーンウォール州ニューキーを目指した旅の様子

デザイン部門のチーフ、ヨゼフ・カバン氏は次のように話す。「わたしたちは、ブランドをエモーショナルなものにする必要があります」。それは、ID.バズに落とし込まれているだろうか。

英国の冬は、1年で最も辛い季節だと思う。乗り越えるために、生きる活力が必要な季節でもある。フォルクスワーゲンのキャンパーで楽しむ真夏のアウトドアを想像し、数か月をしのぐことも手段の1つだ。

グレートブリテン島の南西部、グラストンベリーでのロックフェスが待ち遠しい。カスタム・フォルクスワーゲンとダンス・ミュージックの祭典として1987年にスタートした、ラン・トゥ・ザ・サンというイベントも、2023年5月に復活するという。

とはいえ、英国の冬はまだ長い。この辺りで筆者は休暇を取る必要がある。新しいID.バズは、空冷フォルクスワーゲンのような気持ちを生み出してくれるだろうか。海岸線の雰囲気との相性はどうだろう。実際に、走ってみるしかない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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