真冬にサマーフェス気分 フォルクスワーゲンID.バズで海岸線を目指す 次世代の小さなバス 後編

公開 : 2023.02.18 09:46

BEVとして蘇ったVWタイプ2。数か月後のサマー・フェスティバルを想像し、英国編集部が南西部のリゾート地を訪ねました。

悪化する一方の天気でも車内は快適

英国の冬は日没が早い。明るいうちに今回の目的地、グレートブリテン島の南西に位置するコーンウォール州ニューキーへ到着するため先を急ぐ。まさに、ラン・トゥ・ザ・サン(太陽へ走れ)だ。

ここから先は、ストレスが溜まりがちな幹線道路以外、適した道がない。幸い、路面は部分的に凍結していたものの、目立った交通渋滞に巻き込まれることはなかったが。

フォルクスワーゲンID.バズ(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ(英国仕様)

ドーセット州の西、デボン州へもトラブルなく到達。天気は悪化する一方のようだが、フォルクスワーゲンID.バズの車内は快適。楽しい観光ドライブと呼べることは明らかだった。オフシーズンに沿岸のリゾート地を訪れることが、少し寂しいものだとしても。

西端のコーンウォール州へ入り、目指したニューキーの町のメイン通りを流す。パブやホテルは物静かで、ビーチの人は数えるほど。ウェットスーツに身を包んだサーファーが海へ歩いている。ID.バズは、アイスクリームを売るようなキッチンカーにも見える。

日が傾き、リビングで過ごす人は温かい紅茶で癒やされていることだろう。筆者はBEVのドライバーらしく、20分ほど街をうろつき充電器を探した。それから、閑散とした海辺のゲームセンターで休暇気分を楽しんだ。

ポケットに小銭を残したまま、今晩のホテルへ。サッカーの試合をテレビで観戦するさなか、窓の外では盛大に冷たい雨が降っている。あと数か月後には、フォルクスワーゲンのイベント、ラン・トゥ・ザ・サンが開催される場所だから、それでも気分は上々だ。

帰りは時間効率に優れる高速道路で

翌日、朝日が見えたのは6時半。気温が0度に上昇するまで、数時間は必要だった。かつてフォルクスワーゲンがずらりと並んだ草原では、牛の群れがのんびり草をはんでいる。汚れたライムイエローのID.バズが1台やってきても、気にかける様子はなかった。

写真撮影のために海岸線を往復し終えると、駆動用バッテリーの残量は15%。航続距離は怪しい。付近の急速充電器を検索してみると、ニューキーの空港が出てきた。駐車場に新設されたらしい。

フォルクスワーゲンID.バズ(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ(英国仕様)

航空機の格納庫を背にしながら、ID.バズにエネルギーを蓄える。終わるのを待っている間、ターミナルビルを散策することにした。

その日の飛行機は2便だけ。出発ラウンジのカフェでは、笑顔のスタッフが美味しいパニーニとコーヒーを提供してくれた。行きあたりばったりの充電の待ち時間で、幸せな気分になるのは今回が初めてではない。だが、妙に心へ響くサービスだった。

小腹用にミートパイをテイクアウトし、香ばしい匂いに包まれながら、駆動用バッテリーが満たされたID.バズへ戻る。帰路は、時間効率に優れる高速道路を選ぶことにした。

風光明媚なセバーン・エスチュエリーの河口を見られないのは少々残念に思えたが、そこを経由するには、M4号線という交通量の多いルートを走ることになる。笑顔で1日を終えることは難しかっただろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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