少しの改良で完璧になれる ジェネシスGV60 プレミアムへ試乗 内装は競合を凌駕

公開 : 2023.02.24 08:25

低重心の後輪駆動でシャシーバランスは良好

乗り心地は、期待したほどではなかった。プレミアム・グレードの方が、スポーツプラス・グレードより肉厚なタイヤを履くのだが、市街地では時折入力をなだめきれない場面もあった。高速域では終始滑らかな印象だけれど。

恐らく、カメラ映像を利用したアダプティブ・ダンパーが組まれていないためだろう。VG60では、上級グレードのみの設定になる。

ジェネシスGV60 プレミアム(欧州仕様)
ジェネシスGV60 プレミアム(欧州仕様)

カーブへ侵入すると、ステアリングホイールの入力への反応はスポーツプラスより鋭い。一方で、手のひらへ伝わる感触は殆どない。

それでも、基礎骨格をなすE-GMPプラットフォームが低重心を叶えており、ボディロールは抑制され、シャシーバランスは良好。後輪駆動モデルらしくリアタイヤがクルマを押すような感覚があり、運転は楽しめる。

試乗した日は氷点下という気温の低さで、航続距離の公平な評価はできなかった。少なくとも、同条件で3.2km/kWh近くまで能力が低下するモデルも珍しくないなか、平均で4.6km/kWhに届いていたことは高く評価できる。

エネルギー効率に優れる、ヒートポンプ式のエアコンが貢献していることは間違いない。同等のパワートレインを搭載するキアEV6の場合、現実的な航続距離は420km程度になるが、恐らくGV60でもそれに並ぶだろう。

少しの改良を加えれば完璧な仕上がり

シャシーへもう少しの改良を加えれば、BEVの中型クロスオーバーとして、ジェネシスGV60は完璧な仕上がりになる可能性を秘めている。既に優れた完成度だといっていい。

テスラを超える、上質なインテリアは明らかな強み。動的能力や急速充電能力、航続距離などの総合力でも、アウディボルボの競合モデルより有利だといえる。

ジェネシスGV60 プレミアム(欧州仕様)
ジェネシスGV60 プレミアム(欧州仕様)

それだけに、ジェネシスが英国価格を大幅に引き上げたことが残念だ。BMW iX3やジャガーIペイスといった、セグメント上のモデルよりお手頃ではあるものの、少々強気に出すぎたのではないだろうか。

ジェネシスGV60 プレミアム(欧州仕様)のスペック

英国価格:6万835ポンド(約973万円/試乗車)
全長:4515mm
全幅:1890mm
全高:1580mm
最高速度:185km/h
0-100km/h加速:7.8秒
航続距離:516km
電費:5.7km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1975kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:76.0kWh
急速充電能力:260kW(DC)
最高出力:229ps
最大トルク:35.6kg-m
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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