米軍基地で「史上初」上映の舞台裏 海外で大絶賛 日本初ドリフト映画「アライブフーン」

公開 : 2023.02.14 19:05  更新 : 2023.02.15 10:39

日本での公開時には評価されなかったドリフト映画が海外で大絶賛! 米軍三沢基地で上映の歴史的イベントも。映画製作と公開の舞台裏を紹介します。

日本初の本格ドリフト映画が世界を席巻

日本初の本格ドリフト映画が、いま世界を席巻しつつある。

2022年6月に公開された「アライブフーン」(配給:イオンエンターテイメント/監督:下山天)は日本人の監督とスタッフ、俳優陣そして世界トップレベルの日本人ドリフトレーサー達によって作られた映画だ。

2022年6月に公開された「アライブフーン」は監督:下山天、主演:野村周平。eスポーツ日本一のレーサーが、解散の危機に陥ったドリフトチームにスカウトされ、ドリフトの頂点を目指す様子を描いた映画。CGではなく実車が使用され、撮影されている。
2022年6月に公開された「アライブフーン」は監督:下山天、主演:野村周平。eスポーツ日本一のレーサーが、解散の危機に陥ったドリフトチームにスカウトされ、ドリフトの頂点を目指す様子を描いた映画。CGではなく実車が使用され、撮影されている。

ほとんどのロケはドリフトの聖地「エビスサーキット」を中心に福島県内にておこなわれており、シルビアS15(エンジンは2JZ)、GRスープラ、GRヤリス、マークII(2JZ)、チェイサーなど出てくるドリフト車両もすべて日本車という完全な純日本映画である。

ところが、映画自体の評価はすこぶる高かったが、日本での公開時には、中にはロングランで上映された劇場もあったものの、それほどの盛り上がりはみられなかった。

ゲーム作家の健部伸明氏は以下のように話す。

「わたしはすでに6回劇場で見ていますが、アライブフーンはハリウッドが百倍の予算を出したとしても、この映画は撮れないでしょう。お金を出せば撮れる種類の映画ではありませんからね」

「何十人ものさまざまの分野のプロが、熱く本気になってコストを大きく超える仕事をしています。こんな映画が日本で実現したこと自体が奇跡ともいえるでしょう」

日本での公開を終えたあと、8月末頃からは海外での上映が始まったわけだが、日本とは反対にアライブフーンの快進撃が始まった。

シンガポールでは「陸のトップガン」と評され興行収入6位。9月に米国シカゴで開催された映画祭「Asian Pop-Up Cinema」では最高栄誉である「Audience Choice Award/観客賞」を受賞した。

世界15か国で劇場公開されシンガポール、タイ、台湾ではトップ10入りしてタイの映画サイト人気ランキング1位を獲得。

台湾では6週間のロングラン、フィリピンでは25万人を動員、オランダの映画祭では観客投票3位、そしてアメリカ・シカゴの映画祭では観客投票1位となった。

日本映画史上最高点 「人気」の逆輸入

また、この原稿を書いている2月13日現在、世界最大の映画評価サイト「IMDb」におけるUSユーザーの評価は何と日本映画史上最高点の「9.0」を記録している。

アメリカでの本格的な上映はまだ始まっておらず「アライブフーン」の上映はシカゴで開催されたアジア映画の祭典「Asian Pop-Up Cinema」の2回のみ。本格上映が始まったら一体どんなことが起こるのか。

台湾での春節連休期間の視聴ランキングは堂々の1位を獲得
台湾での春節連休期間の視聴ランキングは堂々の1位を獲得

いち早く配信が始まった台湾でも飛ぶ鳥を落とす勢いだ。

台湾では「AliveHoon」とのタイトルで配信が始まり、前宣伝ゼロの状態でスタートしたものの、春節連休期間の視聴ランキングは堂々の1位を獲得している。

そしてこれら海外での勢いが日本にも「逆輸入」されつつある。

昨年12月上旬にドリパスの再上映リクエスト「もう1度映画館で観たい映画」で「劇場版 呪術廻戦0」を抜いて1位となったことで再上映が決定。

早速1月15日のTOHOシネマズ日本橋から再上映がスタートしており、これまで、東京、栃木、茨城、大阪、福岡で上映されてきた。

今後は仙台(2月25日)、福島(3月4日)、青森(3月10‐11日)、尼崎(3月17日)、苫小牧(3月25日)での上映が予定されている。

筆者も1月27日HUMAXシネマ池袋での再上映に足を運んだ。

香港映画の「頭文字D」とも、ハリウッド映画の「ワイルド・スピード」とも違う、本物のドリフトレースをこの映画ではみることができた。

主人公の成長ストーリーもいい。何よりもスタントマンによるドリフトではなく、土屋圭市氏、織戸学氏というドリフト界のレジェンドのもとに集まった齊藤大吾氏、中村直樹氏など超一流の現役レーサーが鬼気迫る本物のドリフトレースをみせてくれる。

日本のクルマ好きはもちろん、自動車業界に携わる人にはこの映画をみてもらいたいとさえ思った。

アライブフーンは日本の自動車業界を元気にする映画になるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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