米軍基地で「史上初」上映の舞台裏 海外で大絶賛 日本初ドリフト映画「アライブフーン」

公開 : 2023.02.14 19:05  更新 : 2023.02.15 10:39

前代未聞! 俳優乗せて100km/hで撮影

下山監督はどのような思いでこの映画を作ったのか?

「日本は世界屈指の自動車王国でありながら実車を使ったクルマ映画がこれまでほとんどありませんでした」

演者を乗せての撮影で100km/h超で走行することは異例という。
演者を乗せての撮影で100km/h超で走行することは異例という。

「日本から世界に向けて発信できる日本発祥のドリフト映画を作りたい! という思いを抱いていたころ、土屋圭市さんから『すべて実際の車両でドリフト映画を作ろう。もちろんCG無しでやりましょう』というアイデアを頂きました。こうして生まれたのがアライブフーンです」

「主演の野村周平さんはじめ俳優の皆さんにも実際に乗ってもらって、ほとんどリアルスピードで撮影しています」

「実はリアルスピードで走るクルマにカメラや照明が載ることからして前代未聞なんです。また、俳優さんを乗せた時点で最高60-70km/hくらいがマックスの速度です」

「実際に機材を載せて俳優さんを乗せて撮影のために100km/h超えるなんてことは世界的にもありえないことなのですが、この映画では実際のレースと同じことをやりました」(下山天監督)

さらに、日本映画史に残る快挙はまだほかにもある。

2023年1月14日に米軍三沢基地にてアライブフーンの上映がおこなわれたのである。

在日米軍においては専用の映画館を持つ基地もいくつかあるが、そこでは米国の映画館と同じ作品が上映されてきた。

日本映画のアライブフーンが上映されることは70年超におよぶ米軍基地の歴史の中で初。極めて異例な歴史的快挙が実現したことになる。

どういう経緯で上映が実現したのか。そこにはひとりの、元米軍人であるプロドリフターの存在があった。

青森県三沢市でパフォーマンスカーショップ「PINKU STYLE」を営む、ドナルド・ジャクソン氏である。

ジャクソン氏は自身の競技エントリーやドリフト車両の製作や販売をおこなっているが、これまで米軍人がアメリカへ帰国する際の「お持ち帰りJDM」(製造から25年以上経過した日本車)についても約400台を送り出した実績を持つ。

歴史的イベントに 米軍基地で映画上映

――米軍三沢基地でアライブフーンが上映されることになった経緯を教えてください。

「昨年6月20日に青森の映画館で『ALIVEHOONアライブフーン』をみました」

米軍三沢基地で上映会がおこなわれた。日本映画「アライブフーン」が上映されることは70年超におよぶ米軍基地の歴史の中で初という。
米軍三沢基地で上映会がおこなわれた。日本映画「アライブフーン」が上映されることは70年超におよぶ米軍基地の歴史の中で初という。

「わたし自身、プロのドリフトレースで活動し、また専門店を営んでいますからこの映画のすばらしさに心底感動しました」

「そして、映画をみたあとすぐに、下山監督にお祝いの言葉を送り、そこからわたし達の友情が始まりました」

「三沢基地の米軍人もドリフトやJDMが大好きな人がたくさんいます。ぜひとも、この映画を日本にいる米軍人にみてもらいたい。そこで下山監督に『三沢基地の劇場で上映することを手伝いたい』と伝えました」

――上映が実現するまでに苦労したことはありますか?

「お店の仕事との両立以外、苦労したことはありません。しかし、上映場所が軍事施設内の為、ポスター掲示やチラシ配布など許されませんでした。そのため、わたし達でフェイスブック、IG、ツイッターを介して独自のプロモーションを実施しました」

――映画をみに来た人びとの反応はいかがでしたか?

「CGではない、真のドリフト映画をスクリーンでみることができて観客全員が感動し、とても幸せな気分になっていたと思います。アクション映画にCGが当たり前の時代に、日本のトップレベルのドリフトドライバーが多数出演して、本当のドリフト競技を見せてくれたアライブフーンはとても新鮮でした」

「みているものはすべてリアルな動きです。『グランツーリスモ』でクルマに目覚めた僕のような人間には、親近感のわく映画だと思います」

ドリフトは日本生まれのモータースポーツで今や世界40か国以上で正式な競技としてシリーズ開催されている。

2020年にはFIA(世界自動車連盟)によって統一車両規則が承認された。

しかしながら、ストリート発祥のモータースポーツということもあり、日本では危険走行のイメージが依然、強く残っているのも事実だ。

この映画はそんなドリフトのアングラな印象を大きく変えてくれる。

エンドロールに出てくる見慣れた日本のパーツブランドや自動車関連企業の名前を見ていると目頭が熱くなるかもしれない。

そして、最後には「よくぞこんなすごい映画を作ってくれました!」と感謝の気持ちが湧き上がってくると思う。ドリフトに対してあまり良いイメージを持っていなかった筆者自身がそうであったように。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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