290万円以下のクラシック・スポーツ MG TD モーガン・プラス4 1950年代の2台

公開 : 2023.02.26 07:05

以前のモデルと比較して高い動力性能

他方、モーガンはMG以上に部品を入手するルートが限られていた。スタンダード社は、1950年に4気筒1267ccエンジンの生産を終了。この影響で、4/4は1955年まで生産を一時的に停止せざるを得なかった。

かわりに手配されたのが、ヴァンガード社の2088ccユニット。結果として、新しい2シーター・モデルの提供が始まった。それがプラス4だ。

モーガン・プラス4(1950〜1969年/北米仕様)
モーガン・プラス4(1950〜1969年/北米仕様)

それ以前のモデルと比較して動力性能は高く、0-97km/h加速は17.9秒、最高速度は136km/h以上がうたわれた。一方、スチール製バックボーンにアッシュ材のウッドフレームを組み、スチール製ボディを仮装する様式は変わらない。

フロント・サスペンションは独立懸架式。1910年からの特徴といえた、スライディングピラー構造を維持しつつ、コイルスプリングとダンパーが採用されている。リアはリジッドアクスルで、リーフスプリングが支えた。

オリジナルのプラス4には、1954年に2度の大きなアップデートが施されている。1度目は、トライアンフTR2用にヴァンガード社が改良型エンジンを開発したことで、モーガンにも好ましい影響が及んだもの。

排気量が1991ccになり、オーバーヘッドバルブにSUキャブレターが2基組まれ、最高出力91psを獲得。0-97km/h加速を10.0秒へ短縮し、最高速度は160km/hに届いた。

2度目は1954年の後半。フロントグリルがフラットラッドと呼ばれるスクエアなものから、カーブを描くカウルへ改められている。これは、プラス4が終了する1969年まで変わっていない。

洗練不足を吹き飛ばす痛快な動力性能

MG TDとモーガン・プラス4の2台へ乗り比べると、1250ccと1991ccという排気量の差を実感する。走りの余裕ではプラス4が有利だが、パワーの差で優劣が決まるものでもない。ドライビング・ファンの方向性が異なる。

今回ご登場いただいたブリティッシュ・グリーンのプラス4は1953年式で、フラットラッドのフロントグリルが目印。希望価格は1万8000ポンド(約289万円)を遥かに超えており、非常に状態が良い。

モーガン・プラス4(1950〜1969年/北米仕様)
モーガン・プラス4(1950〜1969年/北米仕様)

モーガンを専門とするリチャード・ソーン・クラシックカー社によれば、TR2用のヴァンガード・エンジンを、オプションとしてひと足先に搭載したモデルだという。現在は後年の進化版プラス4と同様に、TR3のエンジンが組まれている。

筆者の身長は170cmほどだが、プラス4の固定式シートにピタリと収まる。ダッシュボードはニス仕上げのウッド。中央のメーターパネルには、大きなスピードメーターと、補機類のメーターが収まる。左手には黒い盤面のタコメーターが付く。

フロアから伸びるブレーキとクラッチのペダルは、感触が殆どない。バルクヘッド側から伸びるアクセルペダルも、ダイレクト感が乏しい。

それでも痛快な動力性能で、洗練不足を吹き飛ばす。ウェット状態のサーキットでは、少々手に余るほど。

発進と同時にエグゾーストから激しい唸りが放たれ、タイトな4速MTを駆使すれば、御年70歳とは思えない勢いで加速する。ステアリングホイールは速度が増しても重く、フィードバックが濃くなることはない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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