若い世代が買っている ロールス・ロイス、新型車はすべてBEVに エンジン車は現行世代で最後

公開 : 2023.02.14 18:05

ロールス・ロイスはEVのみのブランドとなることを目指し、今後の新型車はすべてEVとする予定です。ゴースト、カリナン、ファントムの改良型が最後のV12エンジン搭載車となります。

現行モデルがブランド最後のV12搭載車に

ロールス・ロイスは、2030年末までにEV専用ブランドに移行する計画で、今後の新型車はすべてEVとなる予定である。

ロールス・ロイス初の市販EVであるスペクターは、今年後半に生産が開始される予定だ。同社のトルステン・ミュラー・エトヴェシュCEOは、ファントム、ゴースト、カリナンの現行モデル群はV12エンジンを引き続き使用するが、それ以降は電気駆動に切り替えると発言した。

最高出力585psのスペクターがロールス・ロイス初の市販EVとなった。
最高出力585psのスペクターがロールス・ロイス初の市販EVとなった。    AUTOCAR

ミュラー・エトヴェシュCEOは「2030年末までにV12は廃止されます。シリーズ2(現行モデルの改良型)はV12を、新型車はすべてEVになります」と述べた。

また、中間的なハイブリッドモデルは発売せず、ガソリンエンジンからEVに直接移行することを改めて確認した。ミュラー・エトヴェシュCEOは「小さな会社なので、すべてを手に入れるつもりはありません」としている。

「V12に愛想を尽かしたわけではありませんし、新しい要求に応えるために投資もしていくつもりです。V12からEVへの変化は素敵なことです」

スペクター以降の新型車の発売時期や、生産期間は確約されていない。「10年、あるいはそれ以上です。初代ファントムは14年でした。ファントムは当社の販売台数の10%を占め、価格も100万ユーロ(約1億4000万円)を超えますから、(V12の使用が)ずっと続いていても不思議はないでしょう」

ファントム・クーペの精神的後継車であるスペクターは、第一にロール・ロイス、第二にEVとして開発されており、そのように認識されることを目指しているという。

販売台数にはこだわらない姿勢

ロールス・ロイスの2022年の販売台数は6000台強となり、オーダーメイドのパーソナライゼーションがかつてないほど増えたおかげで、車両の平均価格が初めて50万ユーロ(約7000万円)を超えた。ミュラー・エトヴェシュCEOは、同社は台数目標を追わずに需要のみに導かれているとし、将来のためにお金を貯めるのではなく、お金を使って人生を楽しみたいという購入者の考え方に変化が見られると述べた。

「需要に応じた販売をしているので、年によっては6000台を下回ることもあるでしょう。決して量を押しつけることはしませんし、あくまでも需要に応じたものです。しかし、不況と無縁ではありません。重要なのは(購入者の)お金ではなく、気分です。自分の会社の調子が悪ければ、買いたい気持ちにはならないでしょう」

ロールス・ロイスのトルステン・ミュラー・エトヴェシュCEO
ロールス・ロイスのトルステン・ミュラー・エトヴェシュCEO    ロールス・ロイス

「パンデミックで蓄積された財産が『今こそ』という形で使われているため、当社のビジネスが堅固になっているのです。人々は今を生きているのであって、15年、20年先のことを考えているわけではありません。お金だけでなく、ライフスタイルも変わってきています。暮らしの意識が変わったことを、わたし達は強く実感しています。お金だけでなく、ライフスタイルにおいても、人々はその日その日を大切にするようになりました」

「高級品やラグジュアリーは数量ではありません。高級ハンドバッグが何個売れたという話を耳にすることはないでしょう。わたしは台数にはこだわらないので、価格とマージンが重要なのです。台数について言われることはありませんし、台数目標もありません。BMWは、ロールス・ロイスが自然な成長によって発展し、収益性を重視していることについて信頼してくれています」

「7000台になったとしても大きな違いはありません。クライアントとどう向き合い、どうアプローチしていくか。ロールス・ロイスは、5ケタ(1万台以上)の量販ブランドにはなりません」

「当社の顧客は、50万ユーロ(約7000万円)という価格をエクスクルーシブなものとして気に入ってくれています。6000台や6500台といった販売台数ではなく、この数字こそロールス・ロイスがいかにエクスクルーシブであるかを定義するものなのです」

ロールス・ロイスは人気のパーソナライゼーションをさらに発展させるため、グッドウッドの拠点を拡張し、新しい塗装工場などの施設を追加する予定だ。新施設は2025年末から2026年初頭までに完成予定だという。「最新の技術を求めており、これによって自由と新しいアイデアを得ることができます」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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