新時代の幕開けを告げるラグジュアリーEV 10選 アッパークラスの電気自動車たち

公開 : 2023.02.26 18:05

2. BMW iX

「他に類を見ないBMW」……英国編集部のグレッグ・ケーブル記者は、iXをこのように評した。このクルマをはじめ、最近のBMWが従来のデザインタイプから逸脱していることについて、目くじらを立てる評論家もいる。反響を呼ぶことを意図したデザインであることは間違いない。

しかし、BMWでは慣例を無視したエクステリアデザインは珍しいものではない。内燃機関自動車メーカーから、ほぼゼロ・エミッション車のみを扱うブランドへと変貌を遂げたいBMWにとって、iXは画期的なEVとなるよう全身全霊を捧げたクルマなのだ。ボディサイズはX5とほぼ同じだが、軽量複合材料と混合金属を採用した専用プラットフォームをベースとし、電気モーターを前後1基ずつ搭載する。

2. BMW iX
2. BMW iX

エントリーモデルのiX xドライブ40の価格は7万ポンド(約1120万円)弱で、最高出力300psのパワーと400kmの航続距離(WLTP)が得られる。しかし、9万2000ポンド(約1480万円)のxドライブ50にアップグレードすると、これらの数値は大幅に向上し、最高出力は523ps、航続距離は600kmとなり、200kWの急速充電も可能だ。iX xドライブM60は、さらなるパワーが期待される。しかし、軽量プラットフォームを使っているとは言え、車重2.5トンを下回ることはない。

英国編集部による比較テストでは、メルセデス・ベンツEQS(セダン)より一枚上手だった。メルセデスも快適だが、iXの乗り心地の良さと洗練性は格別で、非常に魅力的な高級車になっている。また、EQSが持つ先進性や未来志向に反して、内外ともに温かみがあり、個性的で堅苦しくない味わいを備えている。

iXは、英国編集部が公道テストを実施した際にも印象は変わらなかった。SUVならではの室内快適性と多用途性、心からくつろげる控えめな高級感、そして世界トップクラスのローリング性能とドライバビリティ、苦のない走りと瞬発力、十分な実走行距離を併せ持ち、他のゼロ・エミッションSUVの追随を許さないものであった。トップレベルのEVに期待されるような航続距離の壁を打ち破ることができなかったとしても、BMW iXは10万ポンド近い高級車として、納得できるだけの魅力を備えている。

3. ポルシェタイカン・クロスツーリスモ

ポルシェは、初の市販EVであるタイカンを2020年にデビューさせてから、そのバリエーションを大きく広げてきた。1~2基の駆動モーター、四輪駆動と後輪駆動、パワー、そしてボディタイプを選択できるようになっている。このような選択肢の広さが、ポルシェの全モデルを牽引するほどの販売力を持つ高級EVに変身させたのである。

タイカンはどれを選んでも世界トップクラスの能力を持っており、クロスツーリスモで荷室が拡張され、車高が上がっても、ダイナミック性能が弱まることはないようである。タイカン・クロスツーリスモの乗り味は、不思議なほど路面に吸い付くような落ち着いたボディコントロールが特徴的だが、「おしゃべり」でコミュニケーション力の高いステアリング、繊細なハンドリングレスポンス、理想的なハンドリングバランスと安心感、そして実戦的な速さが保たれているのである。航続距離はクラストップレベルではないが、ほとんどの仕様で、実走行距離400kmは確実に可能だ(英国での評価)。

3. ポルシェ・タイカン・クロスツーリスモ
3. ポルシェ・タイカン・クロスツーリスモ

最大5人乗りで、BMW 3シリーズ・ツーリングに匹敵するラゲッジ容量も評価ポイントである。あらゆる市販EVの中でも非常に完成度が高く、オプションを付けても9万ポンド(約1450万円)以下で購入することができる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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