290万円以下のクラシック・スポーツ メルセデス・ベンツ500 SL シボレー・コルベット C4 1980年代の2台
公開 : 2023.03.04 07:06
近未来感を印象付けるデジタルメーター
インテリアには、1980年代らしく先進的なデザインが与えられた。パワーシートにエアコン、パワーウインドウを標準装備。ダッシュボードにはデジタルメーターが据えられ、近未来感を印象付けた。
品質や静寂性では及ばなくても、ダッシュボードの直線的な造形や、ボタンが並ぶエアコンパネルなどの景色は魅力的。サイドシルが高くフロアは低く、乗り降りしにくいが、500 SLが保守的で古く見えてしまうことは間違いないだろう。
長いボンネット内に収まるエンジンは、全世代のC3からのキャリーオーバーが中心だった。しかし、1985年にL98型と呼ばれる新しい5.7L V8エンジンが投入され、最高出力は253psへ上昇。従来より信頼性も高く、燃費効率も改善された。
今回のC4が積むのもL98型で、アメリカンV8らしく太いトルクが頼もしい。ギアを問わず、アクセルペダルを傾ければ強力に加速を始める。2速へロックすれば、鳥肌モノのダッシュを披露する。
対する500 SLが搭載するV8エンジンは、いかにもドイツ的。低回転域では特に滑らかで優しい印象だが、高回転域まで躊躇することなく吹け上がる。ハイスピード・クルージングに主眼が向けられているのだろう。
最高出力は234ps。コルベット C4と目立った違いはないが、アクセルレスポンスが鈍く、車重は120kg重く、乗り比べると遅く感じてしまう。
両車ともサウンドは聴き応えがある。市街地では穏やかな500 SLだが、回転数の上昇とともに唸りを上げる。コルベット C4は常時うるさい。心地良いメカノイズが、高負荷時には重なってくる。
普段使いに乗れるモデルとして間口が広い500 SL
サーキットを攻め込むならコルベット C4が圧倒するはず。FRP製のボディや、プラスティックが多用された内装で、1480kgと見かけより軽い車重を生んでいる。だたし、優れた動的能力との引き換えといえる、ドライバーの不便は小さくない。
日常的な場面を考えると、500 SLの質感へ惹かれる。スイッチ1つに至るまで、内装は洗練されている。積極的に運転している途中に、部品が折れるようなこともないだろう。シートポジションはサルーンのように快適でもある。
コルベット C4の乗り心地は落ち着かない。路面の凹凸の存在を隠すことはない。短い旅行でも、しなやかな500 SLを選びたくなってしまう。スポーツカーとしての評価からは、少しずれているかもしれないが。
1980年代のクルマは、長距離の快適性や充実した装備などで、次の水準へ高められた。それはスポーツカーでも同様。「スポーツ」という基準ではコルベット C4の方が勝るといえるが、「カー」としての基準でいえば500 SLの方がベターだといえる。
シボレーは進化したコルベット C4を、驚くほどの低コストで提供していた。現在でも、1万8000ポンド(約289万円)の予算を準備すれば、悪くない状態の1台を探せる。500 SLの場合は、ようやく見つけても多少の修理は前提になるはずだ。
筆者なら、晴天のドライブでも駅までの友人のお迎えでも、500 SLを選ぶと思う。普段使いに乗れるモデルとして、間口が広いことは確かだ。
協力:SLショップ社、リチャード・ポーター氏