スパ・フランコルシャンへ メルセデス・ベンツSクラス S 580e(6) 長期テスト カタログ値以上の能力

公開 : 2023.02.26 09:45

気分も体調も優れない日の長距離ドライブ

肝心のレースは、思い描いたようには進まなかった。トランスミッション・ケースへヒビが入り、筆者が運転する直前のスティントでリタイアに終わった。

早々に荷物をまとめてS 580eでホテルへ戻り、部屋に到着すると、筆者のスマートフォンが鳴った。メルセデス・ベンツのアプリ、メルセデス・ミーが、事故に巻き込まれたことを自動的に教えてくれたのだ。

メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)
メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)

ホテルの駐車場へ慌てて戻ると、S 580eのボディには擦り傷が付いていた。大部分が磨けば消えるような薄いものだったが、リアバンパーは外れていて交換修理が必要な状態。相手が隣の区画へクルマを停める際、運転を誤ったようだ。

楽しみにしていた耐久レースを走れなかった直後に、この事故はかなり応えた。翌日、日曜日は朝4時に目を覚ましたが、今ひとつ疲れも取れていなかった。

天気が悪い中、650kmほど運転してグレートブリテン島の西、ウェールズ州の自宅へ。昼食の時間には到着できた。こんな気分も体調も優れない日の長距離ドライブに、S 580eは完璧なモデルといえた。

まもなく、この長期テストは終了する予定。小柄で軽量なスポーツカーがやってくる。

果たしてPHEVのSクラスは、従来の定番といえるディーゼルエンジンを置き換える訴求力を備えていたのか。最後にまとめようと思う。

積算1万9849km アングルシー・サーキットへ

今週は、グレートブリテン島の西部にあるアングルシー・サーキットへ向かった。何台ものクルマを評価する比較試乗は非常に疲れる。

エキゾチックなスーパーカーも運転したが、自宅からの往復も当初の楽しみの1つではあった。世界中の量産車で最も優秀な1台、S 580eでロングドライブできるから。

アングルシー・サーキットのパッドックでの1コマ
アングルシー・サーキットのパッドックでの1コマ

積算2万314km カタログ値以上の航続距離

AUTOCARの読者ならうなずけると思うが、PHEVやバッテリーEVの公称の航続距離は、現実的な数字と大きく異なることが少なくない。日常的な運転でWLTP値の80%に迫れるなら、かなり良好といえるだろう。

ところが、S 580eは更に優秀。一度の充電で100km前後走れるというのがメーカーの主張だが、先日は112kmと表示された。高速道路に乗らなければ。

メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)
メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)

テストデータ

気に入っているトコロ

癒やされる車内:静かで快適な車内に身を置き運転していると、疲れすら癒やされる。

気に入らないトコロ

制限される荷室:大きなボディのSクラスながら、PHEVは荷室容量が限定的。100km以上も走れる駆動用バッテリーを搭載することのデメリットといえる。

テスト車について

モデル名:メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)
新車価格:11万3880ポンド(約1833万円)
テスト車の価格:11万3880ポンド(約1833万円)

テストの記録

燃費:17.2km/L
故障:警告メッセージの誤表示
出費:なし

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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