フォルクスワーゲンID Buzz 詳細データテスト 価格は高い 動力性能はほどほど 静粛性は上々
公開 : 2023.02.18 20:25 更新 : 2023.03.05 00:54
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
ID Buzzのデザインの成否は、どこを基準に考えるかで判断が変わってくるので、まずは誰もが考えるであろうところから話を始めよう。これはタイプ2を現代解釈した後継モデルなのか、という点だ。
アウトラインと主なデザイン要素、すなわちフロントエンドに配したオーバーサイズのVWエンブレムや、ほぼ全長いっぱいに続くガラスハウス、RRのエンジン通気口を思わせるデザインが施されたDピラーは、明らかにタイプ2をモチーフにしている。すっきりと、そして入念に組み込まれ、不自然な模倣品には見せていない。
大きな問題は、そのサイズとプロポーションが、タイプ2とぴったり重なるものではないことだ。4.7mをわずかに超える全長は、1949年生まれのご先祖さまより50cm近く長いし、30cm近くワイドだ。また、四輪が四隅に寄った配置も、ちんまりしたホイールベースのタイプ2とは異なる。
そのため、フォルクスワーゲンはこのクルマを、現代のファミリー向け多目的車として完璧なサイズだというアピールをするかもしれない。小型と中型のバンのギャップを埋め、現代の駐車スペースに収まり、自走式立体駐車場の高さ制限にも抵触しないのだから。
しかし、かつてのマイクロバスが見せた、手品のようなパッケージングの妙を再現しているとは言い難い。文字通りのマイクロというわけではないのだ。フットサルチームのメンバー5人が乗れたり、1週間分のキャンプ用品が積めたり、それが同時にできたりするのか、心配になるほど小さくはない、といってもいい。
それでも、まず発売されたのはショートホイールベース版だ。パワートレインは左右後輪の間に積まれた永久磁石同期電動機が1基のみで、駆動用バッテリーは実用容量77kWh仕様となる。
乗用モデルと商用バンのカーゴが設定され、後者のバックドアは上開きと左右横開きが選択できる。乗用モデルは2列5人乗り、カーゴは補助席付き1列3人乗りだ。
ロングホイールベース版は、今年後半に追加されるとみられる。乗用モデルは3列7人乗りも設定。商用モデルは現在だと通常サイズのユーロパレットふたつを積める荷室がサイズアップすることになる。駆動用バッテリーも大容量版が用意され、110kWhを超えることになりそうだ。2モーターの4WDモデルも準備中だ。
これらすべての基礎となるのが、フォルクスワーゲングループのMEBプラットフォーム。つまり、IDモデルの3〜5と同じメカニズムを使用しているわけで、商用車ではなく乗用車がベースということになる。
サスペンションは四輪独立式。カーゴは積載重量の増加に対応してリアのコイルスプリングがよりハードになっているが、少なくとも商用車ベースの競合車に比べれば、乗り心地やハンドリングにおいていくらか優位な要素を持っているといえる。
もっとも、ウェイトが2.5t近いとなれば、そのアドバンテージがどれほど生きるのかはわからない。それについてはのちのち検証していくが、ディーゼルエンジンを積む同じフォルクスワーゲンのトランスポーターバンが、昨年のテスト時の計測値で比較すると、400kg近く軽かったことだけは覚えておいてほしい。