バッテリーは最大624kWh スカニアが開発中の電動トレーラー ノルウェーで試乗 後編

公開 : 2023.02.27 08:26

自動車の電動化の波は大型トラックにも。英国編集部が、開発が進められるBEVのトレーラーへ試乗しました。

驚くほど簡単に発進できる電動のスカニア

今回、ノルウェーで試乗したのは、バッテリー・エレクトリック・トラック(BET)。スカニアが開発を進める中距離用のトレーラーヘッドだ。

1990年代のクルマで青春時代を過ごした筆者にとって、プラスティック製のボタンとノブがダッシュボードに整列する様子は心が安らぐ。殆どの機能を網羅した、巨大なタッチモニターやタッチセンサーは存在しない。

スカニアが開発中の電動トレーラーヘッド
スカニアが開発中の電動トレーラーヘッド

これで良いと思う。うっかりすれば家をなぎ倒すほどの重量物を運搬する、トラックドライバーの気を散らすような装備は必要ない。主要な操作系は至ってシンプル。一般的な乗用車と大きな違いはない。

「通常はハンドブレーキが備わりますが、このモデルの場合は自動で効きます。まず、ミラーの角度が正しいか確認してください。ステアリングコラムのシフトセレクターをDに倒せば、発進準備は終了です」。スタッフのデニス氏が丁寧に教えてくれる。

これほど簡単だとは想像していなかった。エア圧で動作するブレーキの「プシャッ」というノイズとともに、巨大なスカニアは進み始める。

運転しているのは、2列並ぶリアアクスルの前側だけ、後1軸駆動のトラックで、スタッドレスタイヤを履いていてもトラクションが充分ではない。発進時には太いトルクが余ってしまう。5km/h程度になると、安定性が一気に高まる。

ディーゼルエンジンより遥かに運転しやすい

アクセルペダルのレスポンスは、想像通り極めておおらか。トラクションコントロールが備わっていて、圧雪路面でも問題なく走れる。

運転しているトレーラートラック全体の重量は、20tもある。滑りやすい路面では、僅かな速度超過でも大きな結果を導いてしまう。

スカニアが開発中の電動トレーラーヘッドを運転する筆者
スカニアが開発中の電動トレーラーヘッドを運転する筆者

曲がりのきついカーブでは、ライン選びが非常に重要。トレーラーの最後尾のタイヤが、内輪差で内側に巻き込まれていく。これを巧みに操るのは、ちょっとした曲芸だろう。

下り坂のカーブでは、アンダーステアでトレーラーヘッドが外側へ膨らむ。タイヤへ展開されるパワーとのバランスが悪くても、狙った通りのラインを走ることが難しくなる。

車線の幅に関係なく、運転中はミラーも頻繁に確認しなくてはならない。通常のトラック以上に。前方を確認することと同じくらい、後方の確認も重要だと体感する。

トリプルモーターのパワートレインは、ディーゼル・ターボエンジンより遥かに運転しやすい。太いトルクが、必要に応じて滑らかに生み出される。トランスミッションは、従来より遥かに段数が少ない6速オートマティックだ。

V8エンジンに14速ATを搭載したトラックにも試乗させてもらったが、変速が繰り返されることで、前進すら簡単には思えなかった。細かく加速が途切れるような印象だ。BETは、それを感じさせずに速度を高めていく。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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