露ラーダ・ニーヴァ 輸入業者の「苦悩」とは 個性的で実用的なオフロード車、最後の1台
公開 : 2023.02.22 06:05
ウクライナで発生した紛争により、ラーダ・ニーヴァの輸入販売が窮地に立たされています。英国の輸入業者は、「最後の1台」をほろ苦い思いとともに売りに出しました。次は日本の軽トラックに目を向けているとのことです。
英国最後の1台? 輸入は完全にストップ
ラーダ・ニーヴァの輸入販売が窮地に立たされている。ロンドンのとある輸入業者は、英国向けとしては最後となる可能性のある1台を出品した。
ロシアのウクライナ侵攻から1年余り、東の大国に対する制裁が強まる中、2010年からラーダの輸入を始めたマーク・キー氏は事業の終わりを迎えようとしている。ハイスペックなブロント・プレステージというモデルが、彼が販売する最後のニーヴァになりそうだ。
「ビジネスは完全にストップしてしまいました」と彼は語る。
しかし、紛争における死者数は毎日のように増加しており、推定20万人にのぼるとみられる。キー氏は自身の会社に与える影響は些細なものだと考え、現地で起きていることに「苦痛」を感じているという。
キー氏がラーダ・ニーヴァに興味を持ったのは、アルプスでのスキー休暇中にその潜在能力に気づいたことがきっかけだった。ニーヴァは最悪のコンディションにも対応できる数少ないクルマの1つであると考えたのだ。
「スズキ・ジムニーより大きく、ランドローバーより小さい、技術に頼らず、個性的で実用的、そして『ライフスタイル』的な要素を持たない四輪駆動車の需要が英国にあったのです」
しかし、輸入の手続きは一筋縄ではいかなかった。「ロシア大使館にいろいろなメールや手紙を送っても、なかなか返事がもらえなかったんです。そこで、ラーダの輸出代理店に問い合わせたところ、快い返事をもらいました。白い3ドアの標準的なニーヴァを注文しました。EUに入るまで2週間しかかかりませんでした」
このささやかなきっかけから、ビジネスが始まったのである。まず最初に、アフトワズというメーカーを理解することが不可欠だったという。「赤と青の車両を注文すると、『今月は白を作る。白を受け取るように』と返事がくるんですよ。オプションもありませんでした」
また、政治的な事情もあり、「どうしたらうまくできるのか」ということを常に考えなければならなかった。紛争が始まる前、2022年は90台を納入する予定であった。「2010年以降、保証で修理を検討したのは一度だけです。クレームはたったの1つだけ。ニーヴァは、(以前の主要株主である)ルノーのおかげでよくできているんです」
日本の軽トラックに熱い視線
そんなキー氏の努力にもかかわらず、これから英国にニーヴァが入ることはしばらくないだろう。「愛すべきシンプルな小さな四輪駆動車で、もうこれ以上輸入できないのかと思うと悲しいですが、これが現状です」と彼は言う。「カザフスタン大使館にカザフスタン製のニーヴァの供給を依頼しましたが、まとまった数の発注を求められ、輸入ルートも以前より難しいものになっています」
最後の1台となるかもしれないニーヴァ・ブロント・プレステージを販売することについては、「見送るのはほろ苦いことです。でも、これがロシア車のセールスマンという職業をよく表していますね」と語った。
現在、キー氏は次のビジネスとして東ではなく西に目を向けている。北米では、ダイハツ・ハイゼットやスズキ・キャリイなどの軽トラックがカルト的な人気を博しているのだ。
「米国のトレンドはしばしば英国にも影響を及ぼします。このような小型で軽量、四輪駆動のトラックは、農作業や林業におけるユーティリティトラック(ピックアップトラックとSUVを融合したもの)の経済的な代替品となり、町の住人にとっても楽しい車両となるでしょう」