2035年の欧州エンジン車禁止 小規模メーカーに「救い」の手も 消えない灯火
公開 : 2023.02.21 18:45
2035年に欧州でエンジン車の新車販売が事実上禁止されることが決まりました。しかし、年間1000台未満の小規模メーカーは規制から外れ、エンジン車を作り続けることができます。
英国の少量生産スポーツカーに救い
2月14日、欧州で2035年からエンジン車の新車販売を事実上禁止する法案が採択された。自動車メーカーはEV(電気自動車)への転換を迫られるが、生産台数の少ないメーカーは規制が免除される。
このため、現時点では、小規模メーカーは2035年以降も欧州でエンジン車の販売を継続することが認められている。こうしたメーカーや関連企業が多い英国の自動車産業は、命綱を渡された形だ。
BACの共同設立者であるニール・ブリッグス氏はAUTOCARに、「これは間違いなく、わたし達に多くの扉を開くことになる」と語った。同業他社もこのニュースに勇気づけられている。
先週、欧州議会で正式に可決された法案は、2035年以降にEU圏内で販売される内燃エンジン搭載の乗用車・商用車のCO2排出量を100%削減することを義務づけているが、これは事実上販売を禁止するものである。
しかし、年間登録台数が1000台未満のメーカーは、この規制から免除されることになる。英国にはBAC、ジネッタ、モーガンなど有名なニッチメーカーが複数存在するが、今後も欧州大陸への輸出を続けることができる。
英国はブレグジットによってEUから離脱しているため、この新しい規制は適用されない。しかし、同様の規制を独自導入する可能性はある。
英国運輸省の広報担当者は、この規制に関する見解を示した最終報告書が「まもなく」発表されるとAUTOCARに語り、導入の可能性を排除しなかった。さらに、この報告書では「英国独自の規制」に対して「小規模メーカーの役割を考慮する」とも述べている。
大企業からシェアを奪うチャンスも
アリエルの創設者サイモン・サンダース氏と開発エンジニア、ヘンリー・シーバート・サンダース氏は、このニュースについて「英国の法律に反映される」免除は「非常に歓迎すべきことで、ゼロ・エミッションに向けてより柔軟性を与えるもの」と語っている。
モーガンの広報担当者(スーパー3は三輪車として認定されているため、規制の影響を受けない)は、次のように述べた。「当社は英国の立法者と話し合いを続けており、前向きな結果が出ることを期待しています。しかし、現段階でコメントするのは時期尚早です」
BACのブリッグス氏は「英国政府は、極めて現実的なアプローチをとっていると思います。彼らは耳を傾けてくれました」と話す。
ブリッグス氏によれば、EUの規制免除は英国の小規模メーカーにとって重要な生命線となるだけでなく、チャンスでもあるという。
「BACのような企業が、大企業からシェアを奪う可能性は大いにあると思います。例えば、ランボルギーニ、ポルシェ、フェラーリなどのEVが苦手で、内燃機関自動車が好きなら、ゴードン・マレー(・オートモーティブ)やBACのような企業が人々の行き着く先になるはずです」
ジネッタのマネージング・ディレクターであるエイミー・トムリンソン氏は、「ジネッタはEUにおいて、主にサーキット専用のレーシングカーに焦点を当てていますが、少量生産の英国製スポーツカーに対する需要が欧州に存在することも把握しています。この発表を受けて、需要が拡大しても驚かないでしょう」と述べた。
「今回の規制では、1メーカーにつき1000台という制限が設けられているため、今後、この分野の企業が増えても不思議はありません」
画像 英国自動車産業を足元から支える小規模メーカー【BAC、アリエル、モーガン、ジネッタのモデルを写真で見る】 全74枚