25台のショーファードリブン シトロエンDS 21 マジェスティ 高貴なコーチビルド 前編

公開 : 2023.03.11 07:05

風格と豪奢さを備えるショーファードリブン

それと並行するように、彼はもう1つの方向性を見出していた。4ドアサルーンに代わる、上級で個性的なモデルを作れると考えたのだ。

ビッグ・シトロエンのDSは、既に国外でも特徴的なフランス車として認知されていた。シャプロンらしいエッセンスを加えようと考えても、不思議ではないだろう。かくして、DS 21 マジェスティが1964年のパリ・モーターショーで発表される。

シトロエンDS 21 マジェスティ(1969年/欧州仕様)
シトロエンDS 21 マジェスティ(1969年/欧州仕様)

モディファイは、シトロエンとの協力関係の範囲内に留められていた。それでも、ショーファードリブンのサルーンとして、従来にはない風格と豪奢さを獲得していた。

DS マジェスティは、DS 21がベース。キャブレターを載せ101psを発揮する、ショートストローク型の2175cc 4気筒エンジンが、通常より重いボディを引っ張った。1965年から1969年に、25台が受注生産されている。別の記録では27台という説もある。

ちなみに同社は、シトロエンのカタログ上の最上級グレード、DS 21 プレステージの豪華な内装なども手掛けていた。マジェスティは、それ以上が狙われた。

4ドアのDS マジェスティは、2ドアのパーム・ビーチやル・レマンなどと似た、スクエアなテールエンドを得ている。大きなバンパーと専用のリアフェンダーをまとい、全長は長い。

ルーフラインは通常のDSとは異なり、頭上空間を確保するため後端がフラットに伸ばされた。また、標準のルーフはFRP製でスケルトン構造にボルト固定されていたが、マジェスティではスチール製。溶接で一体化された。

2台として同じ仕上がりにはない

ボディは、シャプロン独自のクロームメッキ・モールやステンレス製のロッカーパネル、専用エンブレムなどで優雅に飾られた。ボンネットやフロントフェンダー、ドアのプレスラインなどは、標準のDSから変更されていない。

コントラストを生むような、明るいカラーでルーフが塗装されることも多かった。クライアントの要望に応じて、オリジナルの装備も設えられた。結果として、2台として同じ仕上がりにはならなかったようだ。

シトロエンDS 21 マジェスティ(1969年/欧州仕様)
シトロエンDS 21 マジェスティ(1969年/欧州仕様)

1965年に製造された1台には、垂直に立ち上がったリアウインドウと、リアヒンジの長いスーイサイドドアが与えられている。4灯ヘッドライトのフロントマスクで。

運転席側と車内空間を仕切る、ディバイダーを装備した例もあった。運転席側に大きな犠牲を与えない限り、リアシート側の足もと空間は大幅に制限されたが。木製の小さなデスクや、書物を入れるポーチが追加された例もあった。

リアシートで操作できるラジオや、ドライバーと会話するためのマイク、読書灯などを備えた例もある。少なくとも、風合いの良いコノリー・レザーで仕立てられる内装は、共通していた。

今回ご紹介するシャシー番号4637101の例は、1969年に販売されたDS 21 マジェスティ。テールフィンが削られた、DS 21 ロレーヌへモデルチェンジする前にアンリ・シャプロン社が仕上げた、最後の1台だった可能性が高い。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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