25台のショーファードリブン シトロエンDS 21 マジェスティ 高貴なコーチビルド 後編
公開 : 2023.03.11 07:06
フランスのコーチビルダー、アンリ・シャプロン社を救ったシトロエンDS。25台が作られた高貴なサルーンを、英国編集部がご紹介します。
威風堂々とした威厳が漂うマジェスティ
ミッドナイト・ブルーのボディにハバナ・ベージュのレザー内装でコーディネートされた、シトロエンDS 21 マジェスティ。磨き込まれたアルミ製のホイールカバーが、印象を引き締める。他のDSと同様に、大きなドアガラスにはフレームがない。
極めて状態は良いが、ダニー・ドノヴァン氏が率いる英国のDDクラシック社によって、レストアを終えたばかり。ベルギーのカーコレクターが、長年大切に管理してきた個体だという。
筆者はDS カブリオレを何台も運転した経験を持つが、コーチビルダーのアンリ・シャプロン社が正式に手掛けたモデルだったのか定かではない。ちょっと気持ちが引き締まる。
実物を目の当たりにすると、威風堂々とした威厳が漂う。フロントフェンダーにはフラッグホルダーが備わらず、ホイールベースは通常のDSと変わらないようだが、フランスの要人が乗っていそうにすら思える。
トランクリッドはスクエアで、荷室は大きい。しかし、リアエンドは第一印象より細身。故シャルル・ド・ゴール大統領が、自信のために長く大きいDS プレジダンジェルを希望したことにもうなずける。
ダイヤモンド・キルト加工された天井
ボンネットを開くと、控えめな直列4気筒エンジンがスペアタイヤの奥に隠れている。ハイドロニューマチックのパイプ類とエアコンのコンプレッサーが、大きく見える。
エンジンルームの後方、バルクヘッドにはアンリ・シャプロン社のシャシープレートが残っている。レストアに一切の抜かりはない。オリジナル状態のまま、シトロエンのエンジンルームをこれ以上美しくすることは不可能だろう。
スリムなダッシュボードには、イェーガー社製の丸いメーターが6枚と、警告灯が並ぶ。珍しい眺めに、シトロエン・ファンとしては思わず興奮してしまう。
すべてのDS マジェスティが、このように仕立てられたわけではない。巨大なエアコンの送風機が、必ずフロントシートの間に装備されていたわけでもない。
縦にリブの入ったレザーシートは、マジェスティとしての別注品。天井の内張りもレザー張りで、見事なダイヤモンド・キルト加工が施されている。リアシート側の空間は、大柄な大人でも充分なゆとりがある。
レザー張りのドアパネルを観察すると、パワーウインドウのスイッチは見当たらない。ダッシュボードのフェイクウッドは、希望すれば本物に差し替えることが可能だった。この例ではそのままのようだが。