ビッグ・シトロエン復活 C5 Xの乗り心地は? ID 19 XM 新旧ハイドロを比較 後編
公開 : 2023.03.04 09:46
シトロエンといえばハイドロ・サスが生む魔法の乗り心地。最新C5 Xの仕上がりを、DSとXMとの比較で確認しました。
センター・スフィアを装備する進化版のXM
シトロエンID 19が搭載する、ハイドロニューマチックの技術はDSと同等。張り巡らされたオイルの回路が、サスペンションからガスが封入されたスフィアへ圧力を伝える。パワステとクラッチ、油圧ブレーキのアシストも、すべてまかなわれている。
ただし、フランス市場向けのIDは価格を抑えるため、装備などが省かれていた。トランスミッションは、ハイドロニューマチックが変速機構を担うセミ・オートマティックではなくマニュアルだし、パワーステアリングもオプションだった。
「快適なシリーズ1のランドローバー・ディフェンダーを運転していると、想像してみてください」。と、オーナーのエドモンド・ヒル氏が事前に話していた。確かに、そんな印象へ近いかもしれない。
彼のID 19のリアドアは、きれいに閉まらない。走行中は風切り音やロードノイズがはっきり聞こえてくるが、その隙間以外からも小さくない。
ロブ・ドレイパー氏のシトロエンXMも、ステアリングとブレーキ、トランスミッション、サスペンションを油圧システムが担っている。だが、進化版となるハイドラクティブ・ハイドロニューマチック・サスペンションの第1世代を搭載する。
前後のアクスルにセンター・スフィアをそれぞれ備え、多くのセンサーが追加され、油圧を左右個別に制御。ボディロールを抑えている。
運転でわかるハイドロニューマチックの強み
DSやXMへ乗ると、シトロエンが乗り心地で定評を築いたハイドロニューマチックの強みが見えてくる。まず車高を調整できる点は、砂利道や高速道路で間違いなく効果的だろう。どちらも、比較的短時間に高さが変化する。
走行中は加減速時の上下動、ピッチングが抑えられている。セルフレベリング機能も備わるため、トレーラーの牽引時も有効だ。路面の凹凸やうねりを越えても、想像通りボディは水平に保たれる。
ワダチを横断するような場面で、XMは若干ボディの動きが目立っていた。ID 19は走行中に聞こえるノイズが大きいため、気にならないだけかもしれない。
コーナーへ侵入すると、IDもXMもボディロールを許す。運転へ慣れるまでに少しの時間が求められるが、グリップ力は高くステアリング・フィールは悪くない。速めのペースでカーブが連続する区間をスムーズに縫え、想像以上の充足感がある。
感心したのが、速度域が上がるほどハイドロニューマチックが機能すること。低速域での隆起部分のいなし方にも唸らされるが、80km/hから110km/hの速度域では、素晴らしい安定性を披露する。
ID 19でもサスペンションが懸命に動き、ボディはフラットに保たれる。風切り音などのノイズが大きくなるとはいえ、素晴らしい。
ゼロキャンバー角、ゼロキャスター角が生む、センタリング性の強いステアリングはIDの特長といえる。大きなボディを導きやすい。XMのステアリングホイールはやや重め。レシオは速いが、手応えは一貫性が乏しいようだった。