新型ルノー・カングー 日本の路上で初試乗! もはや日本仕様が欧州仕様を超えている理由
公開 : 2023.02.24 08:00 更新 : 2023.02.24 10:22
日本仕様は「別注」なのだ!
ところで新型カングーは3種類のグレード、「インテンス」「クレアティフ」「ゼン(受注生産)」で用意される。
前2者の装備面の違いはフォグランプのコーナリング機能の有無、ドアミラーランプのLEDかバルブかといった程度だ。
基本的にはボディ同色でホイールカバーがフルキャップの仕様か、ウレタンバンパー&スチールホイールにハーフキャップという商用車風レトロフィットをあえて施した仕様、という外観の違いだ。
細かなところではクレアティフの方は、スライドドアレールやドアハンドルもボディ同色ではなく黒く仕上げられている。
いずれも、フランスのルノー本社に日本のカングー・カルチャーが理解されているからこそ可能になった、「ジャポン別注仕様」というべきもの。
リアドアが跳ね上げ式のハッチバックではなく、ガラス窓の観音開きダブルドアという点も、日本仕様のオリジナル・ディティールだ。各ドアの上下に、総計4つのキャッチがまるで同じ型で向きだけ異なる点も、なかなか滋味深い。ちなみに本国でダブルドアは今のところパネルバンのみが採用している。
また日本で人気かつクレアティフのイメージカラーであるイエローボディは、本家だったフランスの郵便局「ラ・ポスト(最後のeは発音しないのでラ・ポステではない)」も、今やリセールに有利な白ボディにシート貼りのロゴとなっているとか。
本気で合理性だけ突き詰めると味気ない、のだ。
日本仕様 美点は乗り心地に
それにしても日本仕様の最大の美点は、205/60R16というハイトの高いタイヤで、走りもキチンと商用車フィットされた点にある。
カングーの本国仕様は、足元もこだわって思い切り乗用車に寄せたがゆえの選択だろう、17インチアルミホイール仕様で205/55R17を履いている。銘柄はいずれもコンチネンタルのエコ・コンタクトでエクストラロード仕様だ。
欧州仕様に乗った時も、足がとりわけ硬いと感じたことはなかったが、郊外路から住宅街、高速道路まで、ハイトの高い16インチタイヤは日本の道路と速度域には、ドンズバにハマっていた。低速域から高速域まで、一貫して乗り心地が柔らかなのだ。
下りのコーナーで荒れた路肩に片側だけそれなりの速度で乗り上げても、ステアリングの舵の効きや進路が外乱で乱されることなく、トトンと軽快に吸い込んで、何事もなかったかのごとくクリアしてしまう。
静粛性や動的な快適性という点でも、厚みを増したガラスや遮音材、制動フィールが著しく向上したブレーキやボディ剛性の強化によって、先代カングー2から長足の進化を遂げている。
強いていえば、高速コーナーをビターっと曲がっていく際の安定感、修正舵の不要さといった辺りでは、欧州仕様にやや軍配が上がるが、それは車の違いではなく、純粋にタイヤサイズの醸すニュアンス程度。
先に述べたような、手袋をしたままでも扱い易いほっこりタッチでありながら、ロールや操舵を微妙な感覚で追い込める独特の調律具合は、凡百のハイトワゴンやミニバンが束になっても適わない、カングーならではの動的質感というか、優れたツールだけが使う者に与えられる「使う喜び」だ。
個人的にオプションとして付けたくなるのは、サイドバー収納式のルーフレールと、メーターバイザー脇のヘックス穴に差すスマホのホルダーだ。