奇抜なコンセプトカーへ試乗 感動するほど普通に走るシトロエン・オリ 未来への姿勢を表現

公開 : 2023.02.28 08:25

楽しくてエキサイティングな明るい未来

デザインを率いたピエール・ルクレール氏は、「明るい未来」を表現したと話す。「知的で手頃なモノを生み出しても、残念な結果になるとは限りません。楽しくてエキサイティングにもなるんです」

車重は1t前後が想定され、航続距離は400kmが想定されている。搭載する駆動用バッテリーは比較的小さい40kWhで、駆動用モーターを1基積む。電費効率は10km/kWhが目指されており、現在のBEVの2倍近い数字といえる。

シトロエン・オリ・コンセプト
シトロエン・オリ・コンセプト

とはいえ、量産車へ最も影響が及ぶのはデザイン的な部分だろう。オリを構成する部品の50%がリサイクル素材でできている。そして、すべてがリサイクル可能となっている。いくつか特徴をご紹介しよう。

前後で同一部品のバンパーとガラス

バンパーとフェンダー

シトロエンのマイクロカー、アミと同じく、前後のバンパーは同じカタチで必要な金型は1つで済む。製造や修理のコストを削減し、環境への負荷も低減できる。前後のフェンダーは、一般家庭にある工具で脱着可能。擦り傷が付いても、簡単に交換できる。

フロントガラス

BEVの航続距離を伸ばすには、空力特性が重要となる。しかし、オリの特徴といえるのが、垂直に切り立ったフロントガラスだ。従来の枠を超えるという挑戦的な意味もあったが、コストの大幅な削減にもつながったという。

シトロエン・オリ・コンセプト
シトロエン・オリ・コンセプト

ヘッドライトとボンネット部分に開けられたエアダクトで、走行中の空気はフロントガラスへ導かれ、空気抵抗を減らすらしい。リアガラスもフロントと同一部品になる。

ルーフとボンネット

パルプ素材でできており、ダンボールに近い。ドイツの化学メーカー、BASF社がハニカム構造を用いたパネルを成形し、必要な強度を得ている。コーティングすることで、雨や紫外線に対する耐性も備える。

タイヤとホイール

ホイールは20インチで、オリの専用デザイン。アルミとスチールを組み合わせ重量を抑えつつ、通常のアルミホイールより安価。タイヤは、50万kmも走れる超高耐久のグッドイヤー・イーグル・ゴーという試作品を履く。トレッド面は2回巻き直せるそうだ。

ボールで角度が変わるシート 新ブランドロゴ

駆動用バッテリー

コストや重さ、環境負荷を考慮し容量は40kWhと小さく、それに基づいてオリが設計されている。最高速度は110km/hに制限される。0-100km/h加速も、速さを求めず技術者は仕事を進めたという。

インフォテインメント・システム

インフォテインメント機能のインターフェイスは、ユーザーのスマートフォンが担う。ダッシュボード上にはワイドなモニターが備わり、スマホを接続して用いる。

シトロエン・オリ・コンセプト
シトロエン・オリ・コンセプト

車載コンピューターを削減でき、使用する半導体を減らし、環境負荷の軽減につながる。エアコンの操作には実際に押せるハードボタンが用意され、移動中でも扱いやすい。

シート

背もたれは3Dプリンターで出力されたもの。パイプのフレームで躯体が構成され、カバーは取り外し可能。掃除や模様替えも簡単にできる。

コスト削減のために、シートの調整域は限定的。シートの付け根部分にスポンジ状のボールが組み込まれ、ドライバーが座ると体重に応じて座面が沈み、自然な角度が得られる仕組み。路面からの入力も多少は吸収するという。

ロゴマーク

1919年の創業当時のものを現代風にアレンジした、新ブランドロゴがオリには用いられている。近未来のシトロエンのフロントマスクへ、大きな影響を与えるだろう。

現在のC3やC5 Xは、フロントグリルと一体でダブルシェブロンが構成されているが、オリは楕円形で独立している。このロゴを持ち上げると、充電ポートが姿を表す。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジム・ホルダー

    Jim Holder

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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