最速が楽しいとは限らない スバル BRZ(初代/ZC6型) 英国版中古車ガイド あえて低い限界領域

公開 : 2023.03.07 08:25

高バランスのシャシーで甘美な運転体験を堪能できるBRZ。速さ以外でも楽しさは生まれると、英編集部は魅力を振り返ります。

世界最速のクルマが楽しいとは限らない

世界最速のクルマが、世界最高に楽しいクルマだとは限らない。実際のところ、そんなスピードは現実的ではない。免許証が何枚あっても足りなくなるだろう。

今回取り上げる、ZC6型の初代スバルBRZは、間違いなく最速ではない。それでも、日常的な速度域で最高の動的能力を発揮できる、すこぶる楽しいスポーツカーだ。双子の兄弟、先代のトヨタ86と同様に。

スバルBRZ(初代/2012〜2020年/英国仕様)
スバルBRZ(初代/2012〜2020年/英国仕様)

その鍵を握っているのが、限界領域の低さと、ドライバーを選ばない親しみやすい性格。BRZのグリップ力は高くない。基本的にタイヤは、トヨタプリウスが履くものと同等。しなやかな乗り心地を叶えつつ、気張らずにテールスライドを引き出せる。

危ない特性に思えるかもしれないが、過度な心配は不要といえる。BRZはドライバーズカーとして磨き込まれている。コミュニケーション力に長け、挙動を予想しやすい。ある程度のスキルを備えていれば、充分に手懐けられる。

ダイレクトで適度な重さのステアリングと、バランスに優れたシャシーで、クルマとの一体感は抜群。常に操縦下においておける。万が一に備えて、電子制御によるセーフティネットも控えている。

サスペンションの設定はトヨタの86と少し異なり、BRZの方が僅かにハード。そのぶん、回頭性はよりシャープだ。

手頃な価格で最高のドライバーズカー

トランスミッションは、6速マニュアルを選択できた。操っているという感覚を強めるだけでなく、シフトフィールも素晴らしい。6速ATも選択可能だが、折角のスポーツカーだからMTを選びたいところ。

0-100km/h加速は、MTなら7.6秒。ATは8.2秒と0.6秒劣る。ペダルとシフトレバーを操る人にもよるけれど。

スバルBRZ(初代/2012〜2020年/英国仕様)
スバルBRZ(初代/2012〜2020年/英国仕様)

2.0L水平対向4気筒エンジンが発揮する最高出力は、ホットハッチ級の200ps。自然吸気だから、最大トルクは20.8kg-mと細め。そのかわり、現実的な速度域でも高回転域までしっかり使い切れる。お望みなら、チューニングでパワーアップも可能だ。

初代BRZでもう1つの魅力といえるのが、手頃な中古車価格。2012年に英国で販売が始まった時は2万6000ポンドだったが、現在は1万ポンド(約161万円)程度の例も珍しくない。

英国でも、ディーラー網が充実しているトヨタ86の方が販売台数は多かった。しかしモデルチェンジした今では、希少性の高いBRZの方が、より高い誘引力を備えているように思う。実際、取引価格は僅かに高い。

手頃な価格のドライバーズカーは、最近ではめっきり数が少なくなった。初代スバルBRZは、そのなかで最高の1台に数えられる傑作だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    オリバー・ヤング

    Oliver Young 

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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