V12エンジンでFRの2+2 フェラーリ365 GT4 2+2 400 GTi 412 対極の3台 後編

公開 : 2023.03.12 07:06

12本のシリンダーの滑らかで躍動的な演奏

アルファ・ロメオ・スパイダーと同じドアハンドルを握り、365 GT4 2+2の長いドアを開く。レザーとガラスで覆われた空間が広がる。大きく傾斜した巨大なセンターコンソールが、エンジンを可能な限り後方へ配置した、技術者の苦労を物語る。

ペダルが近く、ステアリングホイールが遠いレイアウトは共通。しかし365 GT4 2+2のダッシュボードはアルカンターラで仕立てられ、補機メーターが高い位置に4枚並んでいる。3台とも、小物入れなどは比較的充実している。アームレストもある。

フェラーリ365 GT4 2+2(1972〜1976年/英国仕様)
フェラーリ365 GT4 2+2(1972〜1976年/英国仕様)

スターターの甲高い唸りを合図に、12本のシリンダーによる躍動的な演奏が始まる。アイドリングは900rpm。400 GTiと412はセンサーとインジェクションの制御で、冷間時でも荒々しさはない。365 GT4 2+2は、整うまでに時間を要する。

グランドツアラーのフェラーリで穏やかに公道を流すことは、充足感に満ちている。アクセルペダルのストロークは長く、反応は正確。クラッチペダルとステアリングホイール、シフトレバーの重み付けと感触は、適度で調和が取れている。

シフトゲートには、レザー製のカバーが掛かる。レバーのストロークは長く、メカニカルな手応えが心地いい。最短時間での変速はできなくても、理想的な比率のレシオを積極的に選べる。7000rpmまでのシルキーな能力を、存分に発揮させられる。

回転数の変化とともに艷やかにパワーが上昇

サウンドで最も聴き応えがあるのは、キャブレターの365 GT4 2+2。軽快に回るカムのノイズと、盛大に吸い込まれる吸気音を伴い、満ち足りた加速を引き出せる。

1速で引っ張れば80km/h。シフトアップし2速では130km/hに迫る。3速では160km/hを超える。回転数の変化とともに、艷やかにパワーが高まる。気持ちを抑えることが難しい。いずれも直線では極めて安定している。

フェラーリ412(1985〜1989年/英国仕様)
フェラーリ412(1985〜1989年/英国仕様)

長く続く高速カーブでも、過度なボディロールなしにスピードを保てる。レスポンシブなステアリングが、パワーアシストされる感覚を薄め、低速域でのダルさを忘れさせる。ターンインを緻密にこなせる。

ロードノイズは想像より小さく、ブレーキは強力。ダンパーの減衰力に不足はなく、乗り心地も安定している。市街地の速度域ではやや硬めながら、軽快で走りにくさは感じない。ボディは幅が広く、車線の幅次第では気を使うが。

聴覚的にはキャブレターの365 GT4 2+2が速く感じるとしても、インジェクションの400 GTiと412は同等以上に加速する。とりわけ洗練された412は粘り強く、能力は上といえる。

4速へ入れたまま、35km/h程度から190km/h以上までまかなえる。内燃エンジンの物理学を超えたようにも思える、長く精彩なダッシュを披露してくれた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

V12エンジンでFRの2+2 フェラーリ365 GT4 2+2 400 GTi 412 対極の3台の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事