ターボかスーチャー、NAか ルノー・フエゴ ランチア・ベータ フォード・カプリ 吸気違いの3台 前編

公開 : 2023.03.18 07:05

ステーションワゴンのようなベータ HPE

フロントアクスル前方に縦置きされ、5速MTを介し前輪を駆動するというレイアウトは、1978年のサルーン、ルノー18 ターボと同様。だが1983年のフエゴ・ターボでは、圧縮比を8:1へ下げつつブースト圧を11psiへ上げ、高出力化されていた。

シャシーも、基本的には18と共有。ターボ仕様でも、サスペンションに変更は施されなかった。

ルノー・フエゴ・ターボ(1983〜1986年/英国仕様)
ルノー・フエゴ・ターボ(1983〜1986年/英国仕様)

前衛的なデザインを手掛けたのは、ルノーに在籍していたロベール・オプロン氏。向上した動力性能が、風洞実験を経て空力特性が煮詰められたフォルムの訴求力を強めた。

BBSのアルミホイールと大きなチンスポイラー、イエロー・レンズのフォグランプで、フエゴ・クーペのトップモデルであることを主張。TURBOのグラフィックがボディサイドに与えられ、露骨に違いが表現されていた。

イタリアにも、パワーアップされた魅力的なモデルがあった。ベータ・ベルリーナ(サルーン)やフルビアを手掛けた、ピエロ・カスタニェロ氏のチームによる、ステーションワゴンのようなシルエットのランチア・ベータ HPEヴォルメックスだ。

ホイールベース2540mmのベータ・ベルリーナ用シャシーを流用し、オリジナルのハイ・パフォーマンス・エステート(HPE)が登場したのは、今回の3台では最も古い1975年。だが、モダンさではまったく引けを取らない。

4気筒ツインカム+スーパーチャージャー

ベータ HPEヴォルメックスが追加されたのは1983年。前後をスポイラーで飾り、フロントグリルにVXのロゴを貼り、ボンネットは小さなパワーバルジを得ている。

フィアット由来の2.0L 4気筒ツインカムエンジンを過給したのは、クランクシャフト駆動のスーパーチャージャー。最高出力は、燃料インジェクション版の123psから137psへ高められ、最大トルクも17.8kg-mから20.9kg-mへ増強されている。

ランチア・ベータ HPEヴォルメックス(1983〜1984年/英国仕様)
ランチア・ベータ HPEヴォルメックス(1983〜1984年/英国仕様)

ランチアが、スーパーチャージャーを選択したのには理由があった。小型・軽量なコンプレッサーを動かすエネルギー損失はエアコン用コンプレッサー以下と小さく、広い回転域で柔軟に効果を発揮し、ターボラグがなかったためだ。

その結果、インジェクション版から1割のパワーアップを果たしただけでなく、高いギア比を与えることで燃費の改善にもつながった。こちらも考えはダウンサイジング化に通じるだろう。

通常のベータ HPEと同様に、サスペンションは前後ともマクファーソンストラット式にアンチロールバーという組み合わせ。HPEヴォルメックスでは、よりレートの高いスプリングが与えられている。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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