ターボかスーチャー、NAか ルノー・フエゴ ランチア・ベータ フォード・カプリ 吸気違いの3台 後編

公開 : 2023.03.18 07:06

1980年代に普及が進んだターボチャージャー。吸気方法の異なるルノーとランチア、フォードの3台を、英国編集部が比較しました。

シャープな反応で発進時から意欲的な加速

シルバーのランチア・ベータ HPEヴォルメックスは、ジェイ・シャルマ氏がオーナーの1984年式。入念にレストアを受けており、見た目だけでなく、シャシーの仕上がりも新車時と変わらないといっていい。

今回の3台では最もボディサイズは小さいが、スタイリングは1番整っているように見える。スマートな容姿を、ブラックアウトされた大きなフロントスポイラーが引き締める。適度にアグレッシブだ。

手前からシルバーのルノー・フエゴ・ターボと、ブルーのフォード・カプリ 2.8インジェクション、シルバーのランチア・ベータ HPEヴォルメックス
手前からシルバーのルノー・フエゴ・ターボと、ブルーのフォード・カプリ 2.8インジェクション、シルバーのランチア・ベータ HPEヴォルメックス

インテリアでは、カラフルに色分けされたヴェリア・ボルレッティ社のメーターや、スクエアなヒーター系の操作パネルが、フィアットとの関係性を匂わせる。ダッシュボードのデザインが特徴的でもある。

ドライビングポジションはイタリア車らしく、足を屈めて腕を伸ばすタイプ。しかし、ドライビング体験は過去のベータ HPEの記憶を清々しく覆してくれた。

アクセルペダルに対する反応はシャープで、発進時から加速は意欲的。今でも速い。6200rpmで始まるレッドゾーンへ向けて回転数を高めても、スーパーチャージャーの悲鳴は聞こえない。後付けのチューニングパーツとは異なる。

パワーステアリングが備わるステアリングホイールは低速域で重めだが、速度の上昇とともに軽快になり、前輪駆動らしい鮮明なフィードバックが伝わってくる。ラック&ピニオン式のステアリングラックは、切り始めの反応がリニアではないけれど。

シャシーバランスが秀逸なランチア

1500rpmを過ぎるとモリモリとトルクが湧き出てくる。コーナーが連続する区間でも、シフトダウンの回数は最小限で済む。遅いトラックの追い越しも難しくない。シャルマのクルマの場合は、シフトレバーにもう少しの調整が必要そうだ。

5000rpmを超えると、2.0L 4気筒ツインカムエンジンは息苦しそうになっていく。そのかわり、スーパーチャージャーの効果で早めのシフトアップでも勢いは失われにくい。

ランチア・ベータ HPEヴォルメックス(1983〜1984年/英国仕様)
ランチア・ベータ HPEヴォルメックス(1983〜1984年/英国仕様)

イタリア生まれのベータ HPEヴォルメックスなためか、グレートブリテン島の荒れた路面との相性は今ひとつ。高速で隆起部分を越えると、硬めのスプリングに対しダンパーの減衰力不足を感じる。うねりを通過すると、垂直方向の制御が追いつかなくなる。

それでもシャシーバランスは秀逸。ホイールベースは長めでも、タイトなカーブではドライバーのいたずら心にリアアクスルが応えてくれた。

対するフォード・カプリのスタイリングには、1960年代に起源を持つ暖かさを感じる。マイケル・サーストン氏の愛車は1984年のスペシャル仕様で、7スポークのRSアルミホイールを履き、リアアクスルにはリミテッドスリップ・デフが組まれている。

ドアを開くと、こちらも特別仕様のハーフレザー・レカロシートが出迎えてくれる。レザー巻きで小さめの3スポーク・ステアリングホイールが、ほぼ垂直にドライバーへ対峙する。奥には、6枚のメーターが大きなパネルに並ぶ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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