ターボかスーチャー、NAか ルノー・フエゴ ランチア・ベータ フォード・カプリ 吸気違いの3台 後編

公開 : 2023.03.18 07:06

ややステアリングが曖昧な後輪駆動のカプリ

サーストンはサスペンション・ブッシュを硬いものへ交換しており、乗り心地は引き締まっている。凹凸を越えても、しっかり組まれたボディはきしまない。乗り心地は3台で最も快適。サイズが大きいものの、風切り音は小さい。

カーブでは、ベータ HPEヴォルメックスやルノー・フエゴ・ターボとの違いが良くわかる。前輪駆動の2台はステアリングホイールを切ると鋭く正確に反応するが、後輪駆動のカプリはリニアに反応しつつ、リア・サスペンションの古さも相まって若干曖昧だ。

フォード・カプリ 2.8インジェクション(1981〜1986年/英国仕様)
フォード・カプリ 2.8インジェクション(1981〜1986年/英国仕様)

ブレーキも、有効な制動力を引き出すには、それなりの力でペダルを踏む必要がある。少なくとも反応は漸進的で、レイアウトはヒール&トゥーするのに塩梅が良いのだが。

インジェクション化された2.8L V6エンジンは、カタログ値上はベータ HPEヴォルメックスより23psほどパワフルだが、この違いが発揮されるのは4000rpm以上。一生懸命回す必要がある。

2気筒多いぶん、エグゾーストノートは良く響く。低回転域から、音響的に加速のプロセスを楽しめる。

スタイリングが最もモダンといえるのは、マーク・パウリング氏がオーナーのフエゴ・ターボだろう。1980年代というより、1990年代のモデルにも見えなくない。リモコンでの集中ドアロックを、量産車として初採用してもいる。

フランス人技術者のポール・リプシュッツ氏が生み出した技術で、PLIPシステムとマニアの間では呼ばれている。現在でも故障せずに動くが、クルマのすぐ隣でボタンを押す必要がある。

高効率で洗練されたフエゴのターボ

シートはクッションが柔らかく、身体を包容してくれる。ステアリングホイールは4スポークで、センターコンソールにはトリップコンピューターが配される。ダッシュボードのデザインはモダンだ。

ターボで加給される1.6L 4気筒エンジンだが、ブースト圧は低め。3000rpmを過ぎると加速力が高まり、爽快とまではいえないにしろ、活発にダッシュを始める。

ルノー・フエゴ・ターボ(1983〜1986年/英国仕様)
ルノー・フエゴ・ターボ(1983〜1986年/英国仕様)

新車当時に中間加速を比べた記録では、4速のまま48km/hから80km/hへ届く時間は、フエゴ・ターボで7.7秒。カプリ 2.8インジェクションで8.5秒、ベータ HPEヴォルメックスは6.4秒となっている。勢いの差は、現在でも変わらない。

ブーストが効き始めても、公道の速度域ではタービンは殆ど鳴かない。高効率で洗練されたシステムなことを物語る。

ブレーキは3台で1番強力。フロントにベンチレーテッド、リアにソリッドのディスクが組まれている。シャープなフォルムのクーペながら、乗り心地は枕のようにソフト。横方向の姿勢制御は緩いものの、操縦性は悪くない。

現在、多くのエンジンがターボ化されていることを考えると、40年前のルノーの判断は正解だったといえる。かといって、クラシックカーとして最も魅力的だとは限らない。

優雅なシティクーペのカプリは、3台では完成度が最も高い。英国人として、贔屓目もある。それでも、スーパーチャージャーを積むイタリアのランチアへ、気持ちが傾いてしまうことは否定できない。

協力:ルートン・フー・ホテル

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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