クルマも「顔認識」の時代 生体認証システムで通行料金や給油決済に 盗難防止も

公開 : 2023.03.07 06:05  更新 : 2023.03.31 09:34

コンチネンタルが開発した生体認証システムは、スマートフォンのようにドライバーの顔を認識するこで、通行料や給油の決済を車載ディスプレイで行えるというものです。盗難防止にも効果的とされています。

顔認証で所有者を特定し、給油決済などに使用

自動車部品大手のコンチネンタルが開発した最新の生体認証システムは、自動車盗難の防止にも効果的とされている。

タイヤの製造でよく知られるコンチネンタルだが、主要コンポーネントを自動車メーカーに供給する世界最大級のサプライヤーでもある。

ドライバーの顔認識をさまざまな決済やデジタルサービスに利用できるという。
ドライバーの顔認識をさまざまな決済やデジタルサービスに利用できるという。

コンチネンタル、ボッシュ、ZFなどの大手サプライヤーに関して重要な点は、自動車のイノベーションの多くが、メーカーではなく彼らからもたらされるということだ。

コンチネンタルの生体認証システムは、わたし達が携帯電話で使っている顔認識とほぼ同じ技術である。生体認証(Biometrics、バイオメトリクス)とは、生物学的特徴を用いた認識システムのことを指す。

指紋のような身近なものから、顔、虹彩、網膜、静脈、掌紋といったユニークなものも認識に用いることがある。また、人の歩行のような動作パターンの認識もこれに含まれる。

コンチネンタルは、パートナー企業であるトライナミクス(Trinamix)社とその独自技術「トライナミクス・フェイス・オーセンティケーション」を用いて、新しい生体認証システムを開発した。アイデアはシンプルだ。キーやコードなど、これまでのセキュリティシステムとは異なり、運転席に座る人を認識しなければ運転することができない。

さらに、買い物の際にスマートフォンで支払いをするように、通行料や給油、EVの充電などの決済も、車載ディスプレイから行うことができる。コンチネンタルはまた、アプリストアの支払いやデジタルサービスへのアクセスにも利用できると考えている。

この生体認証システムでは、メーターディスプレイに設置されたカメラを使用するが、このカメラは欧州で義務化される予定のドライバーの注意レベルを監視するためにも使用される。

2D認識でドライバーの顔の特徴やプロポーションを捉えるだけでなく、ビームプロファイル解析により、「なりすまし」に騙されないようにしている。ドライバーが車両に乗り込み、エンジンをかけようとすると、スクリーンから目には見えない光が照射され、人の顔を規則的なドットパターンで照らす。

そして、それぞれのドットの反射を赤外線カメラで撮影し、画像データをソフトウェアのアルゴリズムで解析する。アルゴリズムは、ビームのプロファイルから測定対象物(この場合はドライバーの顔)の表面素材に関する情報を収集する。これにより、人間の肌と、例えば3Dシリコンマスクのような偽物を区別することができるのだ。

トライナミクス社のシステムは、すでにアンドロイド・スマートフォンで決済を行うためのセキュリティ要件を満たしている。外部テストでは、なりすましの受け入れ率でゼロを記録しているが、同時にわずか250ミリ秒という応答速度も実現している。

ステアリングロックの破壊、配線アクセス、リレーアタックなど、さまざまな盗難手口が生み出されていく中で、この最新技術は、ドライバーを誘拐しない限り、従来の意味での自動車盗難を不可能にしてしまうかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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