GT40の勇姿を重ねて デ・トマソ・パンテーラ アメリカンV8の清楚なプレL 前編

公開 : 2023.03.19 07:05

イタリア生まれのシャシーにアメリカ製V8

1970年には、フォードデ・トマソ・グループの株式の80%を取得。グループ内にあったコーチビルダーのギア社とヴィニャーレ社が傘下へ収まる一方で、デ・トマソのトップにはアレハンドロが残った。

アイアコッカの指揮のもと、新しいグランドツアラーはリンカーン・マーキュリー・ディーラーを通じて北米で販売されることが決定。それ以外の市場では、デ・トマソが自由に流通できるという条件が組まれた。

デ・トマソ・パンテーラ(プレL/1971〜1972年/欧州仕様)
デ・トマソ・パンテーラ(プレL/1971〜1972年/欧州仕様)

かくして、イタリア生まれのシャシーとボディにアメリカ製エンジンが載った、国をまたいだパンテーラが誕生した。このコラボレーションの核をなしていたのは、351cu.in、5763ccの「ハイ・アウトプット」V8エンジンといえるだろう。

オリジナルは、ボス・マスタング用に開発されたフォード・クリーブランド・ユニットの派生版。オイルショックと排気ガス規制が自動車業界を襲う直前、最後の奔放なスモールブロックだ。

同時期のイタリアン・ミドシップと一線を画す特徴といえ、強い個性を生んでいる強心臓でもある。回転域を問わず、放たれるサウンドは紛うことなきアメリカンV8。アイドリング状態から、ドロドロと近づく人の腹部を震わせる。地鳴りのように。

V8エンジンの充足感 ステアリングは正確

発進させても、V8エンジンの主張は続く。低回転域からトルクがみなぎり扱いやすい。初期のパンテーラは運転しにくいという評判があり、初めは恐る恐るアクセルペダルを傾けていたが、想像以上に手懐けやすい。

ステアリングホイールは丁度いい重み付けで回せ、シャシーは懐が深く、操れるという自信が湧いてくる。予想よりも機敏に身をこなし、運転席からの視界は後方以外なら良好。同時期のスーパーカーより幅も狭く、一般道でも扱いにくさは感じにくい。

デ・トマソ・パンテーラ(プレL/1971〜1972年/欧州仕様)
デ・トマソ・パンテーラ(プレL/1971〜1972年/欧州仕様)

タイトなコーナーを結ぶ、ストレートでの加速は最高。調子に乗っていると、アンダーステアで気持ちを正されるが。濡れた路面でアクセルペダルを踏み込むと、低いギアではタイヤが耐えきれない。

ステアリングの反応は正確。適切な侵入速度へ減速すれば、正確にラインを辿れる。ストレートが見え、右足へ力を込めると、野獣の唸り声のような轟音が後方から放たれる。V8エンジンの能力を解き放つという、充足感に浸れる。

1速が横に飛び出た、ドッグレッグ・パターンを持つZF社製のMTは、シフトレバーの感触がタイトで滑らか。スパスパと積極的なシフトアップを許容してくれる。

普段使いしやすそうなフレンドリーな雰囲気を、ストロークが長く、重たいクラッチペダルが濁している。もっとも、エンジンは太いトルクで粘り強いため、3速に入れたまま市街地の交通へ対応できるけれど。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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