驚嘆の二面性を生むW12 ベントレー・フライングスパー・スピードへ試乗 内燃エンジンの頂点

公開 : 2023.03.16 08:25

安楽で猛烈 驚くほどの二面性

シャーベット状になった2速や3速で回る低速コーナーでは、スタビリティ・コントロールが穏やかに介入しつつ、僅かなオーバーステアの素振りを見せる。だが、積極的に操っても4本のタイヤが確実に路面を掴み、落ち着いたマナーで前方へ進んでいく。

四輪操舵システムも搭載し、スポーツサルーンを真似るような走りも可能としている。車重2437kg、全長5316mmもある巨体でありながら、運転は驚くほど楽しい。快適性を重視したリムジンが、ドライバーへ一体感を与えることには感動すら覚える。

ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)
ベントレーフライングスパー・スピード(北米仕様)

ドライブモードでベントレー・モードを選べば、高価格帯にふさわしい極上の安楽さを享受できる。それでいて、スポーツ・モードへ切り替えた時の特性の変化幅は、想像以上。驚くほどの二面性といっていい。

W12ツインターボ・エンジン自体の二面性にも唸らされる。ローンチコントロールで、猛烈な発進加速を楽しむことも許されている。高速道路の合流加速だけでも、興奮するような反応を引き出せる。0-100km/h加速は3.8秒がうたわれる。

アクセルペダルから力を緩めれば、とたんに平穏な移動空間が戻ってくる。洗練された、ZF社製の8速ATとの相性も素晴らしい。緩やかに流している限り、110km/hで走行時のエンジンは1500rpmも回転していない。

スポーツ・モードへ切り替え、マッピングがアグレッシブになっても車内は静か。8速でも6速でも、ノイズは殆ど響いてこない。何速で走っているのか忘れてしまう。

内燃エンジンの頂点に位置する完成度

ベントレーのW型12気筒パワートレインは、内燃エンジンの頂点に位置する完成度だといっていい。見事に洗練され、フライングスパー・スピード固有の二面的な特性を生み出している。

より軽量で軽快に回転する4.0L V8ツインターボを積むフライングスパー Sの方が、動的能力では勝るだろう。だが、ベントレーのリムジンとしての訴求力は、フライングスパー・スピードの方が一枚上手だと思う。

ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)
ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)

同社によれば、W12エンジンの今後の生産能力には限りがあるという。もし興味を抱いたのなら、早めに動かれた方が良いだろう。こちらも手遅れになる前に。

ベントレー・フライングスパー・スピード(北米仕様)のスペック

英国価格:20万8700ポンド(約3360万円)
全長:5316mm
全幅:1978mm
全高:1484mm
最高速度:333km/h
0-100km/h加速:3.8秒
燃費:6.8km/L
CO2排出量:337g/km
車両重量:2437kg
パワートレイン:W型12気筒5950ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:635ps/6000rpm
最大トルク:91.6kg-m/1350-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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