ハリー・ポッターでは飛んだ フォード・アングリア 105E 英国版クラシック・ガイド 前編

公開 : 2023.03.25 07:05  更新 : 2023.03.25 07:53

映画ハリー・ポッターでは魔法で空飛んだ

映画ファンなら、1998年の「ハリー・ポッターと秘密の部屋」に、ライトブルーのアングリア 105Eが登場したことをご存知かもしれない。魔法で空飛ぶ様子がクルマの価値に影響を与え、少なくない数がスクラップ置き場から路上へ復活することになった。

世界で最もエキサイティングな小型車という触れ込みで発売され、1960年代にはロンドンの景色の一部になった、アングリア 105E。英国におけるフォード躍進の立役者といえる、重要なクラシックカーだ。

フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)
フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

オーナーの意見を聞いてみる

幼い頃からクルマ好きだったという、オーボネ・ブラドン氏。視力が弱くても、お気に入りのクルマへ注がれる愛情は絶大だ。

「両親がフォード・アングリアのエステートを所有していました。自分は運転免許を取得できないとはわかっていましたが、両親と話をし、1986年に自分のアングリアを購入しています。今では12台もあります」

フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)
フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

「わたしが運転するのは自宅の敷地内だけ。一般道は友人にお願いします。フォード・アングリア 105Eのオーナーズクラブに加わっていて、素晴らしい仲間がいます。スペアパーツの提供にも積極的なんですよ」

「このライトブルーのアングリア 105Eは、デラックスのサルーン。当時は最も人気のあるスタイルでしたね」

「走行距離が7万4000kmと浅いワンオーナー車で、リアのパーキングセンサーなど、前オーナーが機能的な変更を加えています。まったくレストアせず、この状態なんですよ」

英国で掘り出し物を発見

フォード・アングリア 1200スーパー(英国仕様)

登録:1964年 走行:−km 価格:2万6950ポンド(約433万円)

大費用をかけて、ラリーカーへ改造されたアングリア。FIAが公認するヒストリック・テクニカルパスポート(HTP)を取得しており、FIA主催のロードラリーや、グッドウッド・フェスティバルのイベントなどへ参加できる資格を持つ。

フォード・アングリア 1200スーパー(1964年/英国仕様)
フォード・アングリア 1200スーパー(1964年/英国仕様)

これまでも、レーサーやラリーカーとして活躍してきた。ボディシェルはシーム溶接され、ロールケージが組まれている。1200ccエンジンは130馬力以上を発生し、ブレーキとサスペンションも競技仕様。大容量の燃料タンクと消火システムを実装する。

フォード・アングリア 105E デラックス(英国仕様)

登録:1968年 走行:5万3100km 価格:1万6995ポンド(約273万円)

売り手がタイムワープと表現する、走行距離が驚くほど短いアングリア 105E。現存する、最も状態の良い1台であることは確実だろう。

新車時から1994年まではワンオーナー車。その後2017年まで保管され、新しいタイヤとバッテリー、ステンレス製マフラーが組まれ、復活への整備を受けている。ラグーン・ブルーの塗装は、細かい傷があるものの工場出荷時のままだという。

ボディは一度も溶接による修理を受けておらず、インテリアもオリジナル状態。丁寧に乗られてきたに違いない。

中古車購入時の注意点などは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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