ハリー・ポッターでは飛んだ フォード・アングリア 105E 英国版クラシック・ガイド 後編

公開 : 2023.03.25 07:06  更新 : 2023.04.04 11:05

英国フォードが開発した、個性的なスタイリングのアングリア。彼の地でのクラシックカーの嗜み方をご紹介します。

堅牢性では1198ccより997cc版が勝る

1959年に登場した、フォード・アングリア 105E。サスペンションは、先代のアングリア 100Eの改良版が採用されている。

状態が良ければ操縦性は悪くないものの、左右のタイヤの間隔、トレッドが狭いこともあって、路面が乱れてくると思うようにステアリングが効かなくなる。カーブではボディロールも小さくない。

フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)
フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

当初は、1600km走る毎に11か所のグリスアップが必要とされていた。1962年に登場したアングリア・スーパー 123Eでは、8000km毎へ距離が伸びている。トランスミッションも、オールシンクロの4速マニュアルが載っている。

新しいオーバーヘットバルブ・エンジンは、トルクの発生が低回転域で鈍るフラットスポットが存在した。それに対応するため、約5万台を生産した時点で別のキャブレターへ置換されている。当時、生産初期のモデルは無料で交換してもらえたという。

オリジナルの997ccエンジンは、スーパー 123Eの1198ccユニットより堅牢性では勝る。1961年には、タイミングチェーン・テンショナーが追加されている。

頑丈とはいえ、残存するエンジンは、現在までに1度はリビルドを受けているはず。ベアリングの摩耗を示す機械的な唸りや、タイミングチェーンがガタつく異音がないか、始動させて確かめたい。オイルの減りが早くないかも、チェックポイントになる。

英国ではV8エンジンを押し込んだ例も

現在も走行可能なアングリア 105Eでは、1.5Lのフォード・ユニットへアップグレードされている場合も珍しくない。大排気量のV8エンジンを押し込んだ例も、英国ではしばしば目撃する。

映画ハリー・ポッターへ登場するまでは価値が振るわず、オーナーが好き勝手にモディファイを加えることも多かった。整備記録やクルマの状態を確かめ、ボディシェルに影響を与えるような大幅な変更が加えられていないか調べたいところ。

フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)
フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

ボディシェルは、クルマの骨格をなす重要な部分。特にサスペンション・マウント付近の状態は、しっかり確かめたい。

ボディパネルは、英国では新しい部品を入手可能だが、安くはない。フロントフェンダーは、1枚だけでも1000ポンド(約16万円)以上するという。インナーフェンダーは更に高い。腐りきっていない場合は、部分的な溶接で修理することも可能だ。

既に60年以上も前のコンパクトカーだが、アングリア 105Eは静かで快適に走れる。当時のこのクラスとしては、優れた能力を備えていた。現在の都市交通の流れについていくことは可能。郊外の道では、運転を充分に楽しめるクラシックカーだといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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