ハリー・ポッターでは飛んだ フォード・アングリア 105E 英国版クラシック・ガイド 後編

公開 : 2023.03.25 07:06  更新 : 2023.04.04 11:05

購入時に気をつけたいポイント

ボディとシャシー

アングリア 105Eの天敵はサビ。ヘッドライト付近を中心とするフロントフェンダー全般、リアフェンダー、サイドシルなどが弱点。他にもインナーフェンダーはストラットマウント付近、エンジンルームのバルクヘッドやバッテリートレイも弱い。

Aピラーにジャッキアップ・ポイント、フロアパン、リア・サスペンションのスプリングマウント、シャシーレール、荷室のフロア、バンパーの裏にあるバランスパネル、トランクリッドなども錆びがち。丁寧に状態を観察したい。ボディトリムは入手が難しい。

フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)
フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

シャシー番号は、右側のストラットマウント部分に刻印されている。腐食しやすい場所で、既にパネルごと交換されている例も多い。

モディファイ

これまでのオーナーによって、改造されている例も少なくない。エンジンやトランスミッション、シャシー、ブレーキなどの仕様を調べ、年式に合うものか、作業が適切かなどを確かめる。

エンジン

オーバースクエア形状の997ccユニットは語り継がれるほど堅牢。軽量・高剛性のチューブラー・クランクシャフトは、当時としては画期的な装備だった。

エンジン自体の仕様を確認し、異音やオイル漏れ、クーラント漏れがないか調べる。キャブレターが劣化すると、始動性や滑らかさに影響を与える。内部摩耗の状態や、安定して回転するかもチェックポイント。

トランスミッション

変速時にギアの回転数を調整するシンクロメッシュの状態は、滑らかに変速できるかで確認できる。クラッチペダルを操作し、ベアリングノイズが出ていないか、聞き耳を立てる。試乗で、走行中にギアが抜けないかも確かめたい。

サスペンションとステアリング、ブレーキ

ステアリングラックの摩耗、ダンパーからのオイル漏れ、ブレーキの固着、ブッシュ類の劣化などがチェックポイント。

インテリア

ビニールの内装は破れやすい。一部のスイッチ類やダッシュボード・パネルを除いて、内装トリムの多くは、英国なら新しい部品が入手可能。ドアトリムやカーペットなどは、専門業者が交換キットを提供している。シートも再生が可能だ。

フォード・アングリア 105Eのまとめ

現存するフォード・アングリア 105Eのほぼすべてが、過去に1度はレストアを受けていると考えていい。購入時は今後の費用を踏まえ、可能な限り状態の良い1台を探したい。

クラシックカーとなった今では、グレードによって価格差は生じない。スタンダードかデラックス、スーパーのどれを選ぶかは、好みで決めて良いだろう。オリジナル状態か、改造を受けた状態かでも、価格に大きな違いはないようだ。

フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)
フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

高価な例ほど、状態は良いことが一般的。ラリーイベントへ参加可能な仕上がりのアングリア 105Eも、探せば発見できる。

良いトコロ

英国では特に人気が高く、広く愛されているコンパクトなサルーン。実用的なクラシックカーとして、所有する喜びがある。近年は価値も安定しており、オーナーズクラブのサポート体制も手厚い。スペアパーツも英国では比較的入手しやすい。

良くないトコロ

腐食がひどい場合は復活が難しい。大幅に改造された例も、避けた方が良いだろう。感じ方は人それぞれだが、ハリー・ポッター・ファンだと思われることも。

フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)のスペック

英国価格:514〜598ポンド(1963年時)
生産台数:100万4737台(105E)/7万9223台(123E)
全長:3900-3920mm
全幅:1460mm
全高:1422-1473mm
最高速度:119-132km/h
0-97km/h加速:31.7〜21.6秒
燃費:10.6-15.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:738-853kg
パワートレイン:直列4気筒997/1198cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:39ps/5000rpm-49ps/4800rpm
最大トルク:7.3kg-m/2700rpm-8.7kg-m/2700rpm
ギアボックス:4速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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