屈指の強烈公道マシン アストン マーティン・ヴァルキリーへ試乗 NA V12 1156psのHV 前編
公開 : 2023.03.09 08:25
レッドブルとの協働で8年が費やされた、1156psのナンバー付きハイパーカー。英国編集部が能力に迫りました。
ナンバー取得を許された強烈なアストン
F1マシンの開発で名を馳せるエイドリアン・ニューウェイ氏が、レッドブル・レーシングとアストン マーティンとの協働で、ハイパーカーを作ると発表したのは2015年。ここまでの道のりは、長く困難なものだった。ゲイドンのCEOは2名も交代している。
だが遂に、150名のロイヤル・カスタマーへの納車は、ほぼ終了したという。英国編集部へ、アストン マーティン・ヴァルキリーに試乗する機会が巡ってきた。
筆者が降り立ったのは、中東のバーレーン・インターナショナル・サーキット。最高出力1156psを発揮するヴァルキリーが本領を発揮できる、数少ない場所の1つといえる。ランオフエリアが広いから、初試乗には最適といえるだろう。
恐らく、いや間違いなく、正式にナンバープレートの取得を許された、最も強烈なハイパーカーだといえる。ライバルブランドも驚愕の性能を誇るマシンを開発しているが、走れるのはサーキット限定という例が少なくない。
ニューウェイが掲げた当初のビジョンが、殆ど妥協されることなく、現実のクルマとして体現されている。ヴァルキリーの特別ぶりを、手短な言葉で表現することは難しい。
0.1ミリ単位でボディのサイズを指定
スタイリングを担当したのは、アストン マーティンのチーフデザイナー、マイルズ・ニュルンベルガー氏。ルノー・グループの1つ、ダチアのデザインチーフを短期間努めた後、同社に戻ったばかりというタイミングだった。
ヴァルキリーには、厳正にボディの寸法が決められていた。ニューウェイは、0.1ミリ単位で各部位のサイズを指定したそうだ。
それでもニュルンベルガーは、コクピット空間を拡大するため、会議を通じて8mmの拡大を実現している。頑なな彼から譲歩を引き出したことに、ミーティングルームは驚きに包まれたそうだ。それを知った技術者チームからも、拍手が湧いたらしい。
とはいえ、コクピットは広くない。2021年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、筆者は既にヴァルキリーの助手席へ座っている。当時のアストン マーティンCEO、トビアス・ムアーズ氏がステアリングホイールを握る隣で。
運転席との間隔が非常に近く、大人2人が快適に過ごせるとは思えなかった。ボディ側面に伸びるサイドポッドが大きく、ガルウイング・ドアは小さくしか開かない。150名のオーナーは、自身の身体をなんとか押し込むことになる。
もちろん、今回座るのは運転席。1人で。少なくとも1度シートに身体を収めれば、足もとの空間は充分にある。ペダルボックスも前後に動く。肘まわりはタブ構造のシャシーが立ち上がり、やはり狭い。
筆者の場合は、ヘルメットを被るとルーフに当たってしまうため、シートからクッション材が省かれていた。身長は180cmもないのだけれど。