屈指の強烈公道マシン アストン マーティン・ヴァルキリーへ試乗 NA V12 1156psのHV 前編

公開 : 2023.03.09 08:25

V12エンジンを補助する143psのモーター

運転席からの眺めは、往年のグループCカーのよう。凄くハイテクな。フロントガラスは思い切り湾曲している。ちなみに、このガラス面を拭き取るワイパーの回転機構も、相当な時間を投じて開発されている。ナンバーを取得するうえで、欠かせない要件だ。

後方の視界は、カメラ映像が担う。コンパクトなダッシュボードには、小さなタッチモニターも備わる。

アストン マーティン・ヴァルキリー(欧州仕様)
アストン マーティン・ヴァルキリー(欧州仕様)

ステアリングホイールはほぼ長方形。その中央部分に、アーバン、スポーツ、トラック(サーキット)のモードからシャシー設定を選べるスイッチや、メーター用モニターなどが所狭しと並ぶ。

ERSというボタンもある。これを押すと、V型12気筒エンジンと7速シーケンシャル・トランスミッションの間にある、143psの駆動用モーターによるブースト機能を効かせられる。回生ブレーキで得られたエネルギーを、加速力に展開できる。

このモーターは、変速時のトルクギャップも埋めるという。パフォーマンス重視のハイブリッドシステムだ。

完全な量産仕様として、ヴァルキリーにはアクティブ・サスペンションとスタビリティ・コントロールも実装されている。以前のグッドウッド・フェスティバルで同乗した時は、まだ動いていなかった。

トラック・モードを選択すると、ヴァルキリーは車高が下がり、ダウンフォースを増大させる。電子的に制御されるアクティブ・ウイングとフラップが機能し、最大で1100kgの力でクルマを路面に押し付けるという。

高性能なBEV級の鋭さでパワーが放たれる

ハイライトといえるのが、名門コスワースが開発した6.5L V型12気筒・自然吸気エンジンだ。シリンダーの点火が始まる前に、数秒間エンジンが空転し油圧を高めるため、始動するだけでも特別感は半端ない。

レース用ヘルメットを被っていても、1000rpmに落ち着くアイドリング時ですら猛烈にうるさい。バルブを動かすギア駆動のカムシャフトは、ドライバーのほぼ直後。1万rpmまでブリッピングさせると、激しい振動がシートへダイレクトに伝わってくる。

アストン マーティン・ヴァルキリー(欧州仕様)
アストン マーティン・ヴァルキリー(欧州仕様)

ヴァルキリーの発進は、見た目から想像するほど難しくはない。エンジンの力を借りず、ハイブリッド・モーターだけで低速の短時間なら走れるためだ。モーターの逆回転でバックできるため、7速シーケンシャルMTにリバースギアは備わらない。

エンジンのクラッチが繋がるまでは、とても滑らか。バッテリーEV(BEV)のように加速はしないが。

貸切状態のバーレーン・インターナショナル・サーキットでも、ヴァルキリーへフルスロットルを与えるには勇気がいる。右足へ力を込めると、間髪入れずエンジンが反応し、全身がしびれるような興奮が湧いてくる。

まさに電光石火。高性能なBEV級の鋭さでパワーが放たれる。そしてBEVとは異なり、エンジンの回転数が高まるほどパワーは増大していく。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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