マツダ・デミオXD / 13S
公開 : 2014.09.18 23:30 更新 : 2017.05.29 19:13
はたして、新型デミオはすでに“ハズさない”との定評を得ている昨今のマツダ車として、マニア筋の期待にたがわないデキである。基本的にはパワートレインやグレードを問わず、引き締まり系というかロール剛性高め系。アクセラはジワッと食いつきながら曲がっていくが、それに較べると、デミオは水平姿勢のままヒラヒラと動く。ステアリングやシートからの伝わる接地感がホレボレするほど濃厚……ではないものの、細かな振動を巧妙に吸収して、姿勢変化は小さいのに、無粋な突き上げもない。
わかりやすく(?)表現するなら、新型デミオの走りはフィエスタ風というよりポロっぽい。ただ、前後グリップバランスでいうと、最近では意外なほど尻軽なのが、ポロとの決定的な違い。リニアにグイグイ切り込むステアリングに対して、後輪がアンカー役というより嬉々として後押し役になっている感。安全装置をカットすれば、ドライ路面で盛大にテールを躍らせることも可能。そうしたシーンでも姿勢は安定していてコントロール性も高いから、これはこれでマニア筋には喜ばしい。個人的には、そこにルノーとの共通点を勝手に見出して嬉しかったりもする。
ただ、日本の場合は、アクアやフィット・ハイブリッドのかわりの低燃費車として、新型デミオを買う層も少なくない。いや、そうなってこそデミオは成功といえるだろう。そう考えると、グレードによってもう少し安定志向に仕上げたほうが……と思わなくもない。前軸荷重の大きさとタイヤサイズとの兼ね合いなのか、(ダウンサイザー層が無意識に買ってしまうそうな)最上級のディーゼルA/Tの16インチが、限界内でのコーナリングマナーでも尻軽感がもっとも強い。後輪荷重が抜け気味になる場面だと、滑りはしないがムズムズした感触を伝えてくるところは、ちょっと改善の余地があると思う。まあ、こういうエンスーテイストを安心手頃な国産車価格で提供してくれるところが、今のマツダ最大の売りでもあるわけで、そのサジ加減が、じつに微妙でむずかしいのだが。
……といった重箱のスミはあるにしても、質感、操縦性、乗り心地、剛性感、絶対的キラーアイテム(=ディーゼル)の存在など、マニア的見地から見た場合の新型デミオの商品力と実力は、国産コンパクトカーではアタマひとつふたつ抜けている。
新型デミオにはディーゼルとガソリンにそれぞれ6段A/TとM/T(ディーゼル6段、ガソリン5段)があり、タイヤサイズはディーゼルが16インチメインで一部15インチ、ガソリンは全車15インチだ。