ホットハッチの頂点 ホンダ・シビック・タイプRの能力を探る RS3 ゴルフ R i30 N 4台比較 前編

公開 : 2023.03.18 09:45

VWゴルフらしい能力の幅の広さ

リアタイヤの左右へ伝わるトルクを調整する、リミテッドスリップ・デフも見逃せない。過去最もエキサイティングなゴルフにしたいという、フォルクスワーゲンの意気込みが伝わってくる。シャシーのコンセプトは、RS3にも近い。

0-100km/h加速を4.7秒でこなし、歴代のゴルフで最強の公道仕様といえる。インテリアにカーボンファイバー製トリムがおごられた、初のゴルフでもある。

ブルーのフォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズと、ライトブルーのホンダ・シビック・タイプR
ブルーのフォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズと、ライトブルーのホンダシビック・タイプR

能力の幅広さはゴルフらしい。シビック・タイプRのように激しくコーナーを捲し上げても、粗野な乗り心地を示したり、ボディ剛性の不足は感じさせない。上級なグランドツアラーの領域にも近い。

落ち着いたレザー仕立てのインテリアは、真っ赤なバケットシートは派手過ぎるという向きには好印象なはず。4本出しマフラーやリアウイングで武装しているものの、日常の景色へ違和感なく溶け込める容姿も好ましい。

ただし、同社がアダプティブ・シャシー・コントロールと呼ぶ、普段使いしやすくするアダプティブダンパーは、英国仕様では850ポンド(約14万円)のオプション。相応の車両価格にも関わらず。

チタン製のアクラポビッチ・エグゾーストも、3500ポンド(約56万円)という高価なアイテム。「R」にぴったりなラピス・ブルー塗装には、835ポンド(約13万円)の追加費用が求められる。

試乗車の英国価格は、5万5000ポンド(約885万円)を超えていた。通常のゴルフ R 20イヤーズは、4万8250ポンド(約776万円)なのだけれど。

BMW M5の技術者がシャシー開発を担当

そして、主役と同じアジア勢となるのが、ヒョンデi30 N。8速デュアルクラッチATを搭載し、英国価格は3万5095ポンド(約565万円)からと1番お手頃だ。ホットハッチとしては安くないが、2023年の市場を俯瞰すると、内容に見合った設定といえる。

エンジンは2.0L 4気筒ターボで、最高出力は280psと4台では1番控えめ。前輪駆動で、機械式のリミテッドスリップ・デフが組まれる。シャシー開発は、E39型のBMW M5を生み出した有能な人物が主導した。

ヒョンデi30 N(英国仕様)
ヒョンデi30 N(英国仕様)

2017年に登場し、2021年にフェイスリフトを受けている。軽量な19インチの鍛造ホイールに大径のフロントブレーキが備わり、サスペンションはスプリングとアダプティブダンパーだけでなく、ジオメトリー自体も調整されている。

その結果、優れない路面への処理能力や操縦性が向上している。初期型も魅力的といえたが、少々荒削り感もあった。パッケージングを煮詰めたことで、熟成した特性を得ているはず。今回の比較では、i30 Nの能力の変化も確かめたいと考えている。

自由度の高い動的特性は、どのような味付けへアップデートされたのか。空力が重要視される速度域に届き、国際サーキットでの走りも許容するホットハッチなら、求められる水準は一層厳しいものになる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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