ホットハッチの頂点 ホンダ・シビック・タイプRの能力を探る RS3 ゴルフ R i30 N 4台比較 中編
公開 : 2023.03.18 09:46
細部まで磨き込まれたホンダ・シビック・タイプR。ライバル3台との比較で、その能力の高さへ英国編集部が迫りました。
実用性はシビック・タイプRが1番
フォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズとアウディRS3の内装素材は、いずれも質感が高い。RS3は、ランボルギーニを強く意識しているのかもしれない。直線的でエッジーだ。
ヒョンデi30 Nは今回の4台では1番安価で、インテリアへの不満は相対的に低くなる。硬質なプラスティック製部品も目立つが、ステアリングホイールには、ドライブモードのショートカットが備わる。
ほかの3台のメーターはモニター式に置き換わったが、i30 Nはアナログメーター。今まで以上に魅力的に映る。ドライビングポジションは低く、ホンダ・シビック・タイプRに次いで好ましい。雰囲気は少々地味といえるが、頑張りすぎると稚拙になりかねない。
車内を比較すると、シビック・タイプRの完成度の高さが浮き彫りになる。本物で飾りすぎることなく華やか。日本的な美しさがある。
実用性でも、シビック・タイプRが1番。リアシート側は前後にゆとりがあり、荷室の容量にもアドバンテージがある。ベースのシビック自体が、人間工学やパッケージングに優れている。
RS3は荷室が明らかに小さい。リアアクスルに、RSトルクスプリッター・デフを搭載するためだろう。左右のタイヤへ駆動力を任意に分配するため、マルチプレートクラッチが2セット組まれている。ホットハッチとしては、見逃せない犠牲といえる。
車内の観察を終えて、次は走りへ移ろう。特性の違いは比較的大きいものの、簡単に順位はつけにくいようだ。
速さと身のこなしでドライバーに応える
まずは、i30 N。自社開発のデュアルクラッチATは、フォルクスワーゲン製のものほどシャープではなく、ダイレクトに操っているという感覚を薄めている。ホットハッチを存分に楽しみたいなら、マニュアル・トランスミッションが欲しい。
シャシーにはフェイスリフトで改良を受けているが、依然として、平滑ではない英国郊外の路面へトリッキーに反応する。ドライバーの興奮を誘う側面もあり、すべてを否定するものではないが。どこか、1990年代半ばの日本製スポーツカーのようだ。
ドライブモードで特性を選べるものの、フロントのリミテッドスリップ・デフの効きが強い。幅235のピレリPゼロは、4気筒ターボが発揮する280psを受け止めきれない。落ち着きに欠ける足まわりと相まって、ロデオマシンに乗っているような気分になる。
とはいえ、i30 Nにも好ましい領域がある。グリップとパワーを同調させれば、速さと身のこなしでドライバーに応える。ステアリングホイールの重み付けには、一貫性が乏しいけれど。
勢制御では及ばなくても、即時的な反応は明らかな強み。カーブが連続する手強い道へ、飛び込みたいと思わせる。フロントノーズが少々重いものの、上手にキッカケを与えることで、勢いよくシャシーを旋回させられる。
テールを自在に振り回す楽しさを、久しぶりに思い出した。表現力が豊かで速い。でも不器用。4台では最も生々しく、エンターテイメント性は高い。