ホットハッチの頂点 ホンダ・シビック・タイプRの能力を探る RS3 ゴルフ R i30 N 4台比較 中編

公開 : 2023.03.18 09:46

クルマとドライバーとの間に一定の距離感

ゴルフ R 20イヤーズは、すべての面でi30 Nを凌駕することは間違いない。だが、惹き込まれにくい。

マグナ・シュタイア社が開発したトルクベクタリング機能付きのリアアクスルは、確かに高性能。豪快なドリフトを可能としているが、少しメカニカル過ぎる。クルマとドライバーとの間に、一定の距離感がある。

フォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズ(英国仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ R 20イヤーズ(英国仕様)

ステアリングホイールの反応には一貫性があるものの、実感が乏しい。ドライビングポジションはもう少し下げたい。ゴルフ GTIから乗り換えれば、エネルギッシュさに感銘を受けるだろう。しかし、他の3台のようなライブ感は得にくい。

フォルクスワーゲンのデュアルクラッチAT、DSGは素晴らしい。4気筒2.0Lターボエンジンは、 42.7kg-mのトルクを2100rpmから6500rpmの広い回転域で生み出す。333psというパワーを、5600rpmから900rpmも放ち続ける。呆れるほどに速い。

ダンパーの減衰力は煮詰められている。ドライブモード次第では、ワイルドなエグゾーストノートも響かせる。ステアリングホイールにはRボタンも付いている。

ワインディングをひとのみにできるが、アウトバーンを200km/hでかっ飛ばした方が似合う。ホットハッチとしての楽しさで、シビック・タイプRには届いていない。

A地点からB地点までの速さは、ゴルフ R 20イヤーズが勝つだろう。洗練もされている。エネルギッシュなRS3より、直感的にハイスピードで運転できることも事実だが、魂のようなものを感じにくい。

触れるべき項目が多すぎるシビック・タイプR

リアデフがトルクを意欲的に外側のタイヤへ分配し、バランスを巧妙に調整しているさなかで、挙動を予測しやすいのはゴルフ R 20イヤーズ。他方、パワフルなRS3は、常にそうとは限らない。

とはいえ、RS3が独自の高水準にあることは明らか。直列5気筒ターボエンジンを横向きに搭載した、普段使いできるエキゾチック・モデルだ。対してシビック・タイプRも、先代の栄光に甘んじることなく能力を更に磨いてきた。

グリーンのアウディRS3 スポーツバックと、ライトブルーのホンダ・シビック・タイプR
グリーンのアウディRS3 スポーツバックと、ライトブルーのホンダ・シビック・タイプR

東のホンダと、西のアウディ。前輪駆動と四輪駆動。4台による比較は、2台による対峙となりそうだ。

新しくFL5型へ世代交代したシビック・タイプRには、触れるべき項目が多すぎる。フライホイールは18%軽量化され、ターボは14%も回転慣性を減らし、先代譲りのK20C型2.0L 4気筒VTECエンジンをシャープに回す。

フロントサスペンションは剛性が高められ、タイヤを理想的な角度に保つ能力は25%増している。ステアリングコラムは60%強固になり、19インチ・アルミホイールも高剛性のアイテムが採用されている。マニュアル・トランスミッションも再設計された。

ホワイトボディは、従来より15%剛性を上昇。スタイリングも大幅に一新され、低くワイド。35mm広げられたトレッドを、筋肉質でありながら引き締まったボディラインが包む。車重は1429kgしかない。

全体のプロポーションも好ましい。知らない人が見れば、縦置きエンジンの後輪駆動だと勘違いするかもしれない。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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