4ドア+4シーターの本物 フェラーリ・プロサングエへ試乗 例えるならGTC4クロスカントリー 後編

公開 : 2023.03.11 08:26

マラネロが生み出した4ドア+4シーターのクロスオーバーが、遂に公道へ。英国編集部が、冬のアルプスで実態に迫りました。

プロサングエの中央に座っているような感覚

フェラーリ・プロサングエのダッシュボード中央には、大きなタッチモニターが備わらず、カーナビを利用するにはスマートフォンが必要になる。ミラーリング機能で、メーター用モニターの右側へ表示できる。

ステアリングホイール・ボスの右下には、お約束のマネッティーノ・ドライブモード・ダイヤルがある。アイスとウェット、コンフォート、スポーツ、スタビリティオフの5モードから選択が可能。個別にダンパーの硬さを調整することもできる。

フェラーリ・プロサングエ(欧州仕様)
フェラーリ・プロサングエ(欧州仕様)

全体的に、運転には集中しやすい車内環境といえる。フェラーリらしい。

路上へプロサングエを進めると、喜びに溢れていた。これは、4ドア+4シーターのクーペだ。車高は持ち上げられているが、高すぎない。フロントには6.5L V12エンジンが載っている。

穏やかなドライブモード時は静かにアイドリングを始めるものの、サウンドは間違いなく特別。甘く厚みがある。

ステアリングレシオは、GTC4ルッソと同じ14:1だという。クイックな部類だが、最近のフェラーリほど過敏ではない。

ダイレクトでシャープ。極めて正確で、ロックトゥロックは2回転。切り初めの反応が予想しやすい。アクティブ後輪操舵システムを標準搭載するが、とても自然だ。

フロントアクスルの後方にエンジンを搭載しつつ、ドライバーの位置は比較的前方。ちょうどプロサングエの中央に座っているような感覚がある。低速域での乗り心地は優しい。

他を圧倒するほど衝撃吸収力が高いサス

注目の技術といえるのが、サスペンションに組まれたマルチマティック社のスプールバルブ・ダンパー。路面からの入力とドライバーの操作へ反応し、減衰力を調整する複雑なシステムで、アンチロールバーを不要としている。

説明すると長くなるが、とにかく仕事ぶりは素晴らしい。加減速時のピッチや、旋回時のロールを抑え込み、ドライバーへ安心感を与える。設定はソフトとミディアム、ハードという3段階から選べる。

フェラーリ・プロサングエ(欧州仕様)
フェラーリ・プロサングエ(欧州仕様)

23インチ・アルミホイールに扁平率30のタイヤを履くモデルとしては、他を圧倒するほど衝撃の吸収力が高いと感じた。筆者が記憶しているどのフェラーリよりソリッドで、熟成された質感を実現している。

カーブでの姿勢制御はタイト。電圧48Vで稼働するフェラーリ・アクティブ・サスペンションが、鋭いコーナリングを叶えているのだろう。ボディロールも、背の高いプロポーションから想像する以上に小さい。

大きなエンジンをフロントに積み、車重が2033kgもあり、最低地上高にも余裕があるモデルとして考えれば、身のこなしは引き締まり機敏。操縦性のバランスにも長けている。

そしてかなり速い。0-100km/h加速3.3秒、最高速度310km/hの動力性能を備えているから、圧雪路にスタッドレスタイヤという組み合わせでは、かなりの余剰がある。

その気になれば、気持ち良くテールを滑らせつつ、ラリーカーのような巧みさで落ち着きを取り戻す。いわゆるSUVとは一線を画す。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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