高放射線検出のクルマ、8年間ゼロ 輸出中古車の「放射線量検査」なぜ今も続く? 費用は東電負担
公開 : 2023.03.11 05:45 更新 : 2023.03.11 13:40
放射線量検査 費用はいまも東電負担
これら輸出中古車の放射線量測定の検査費用はどこが負担しているのかご存じだろうか。
実は筆者は初めて知ったが、現在も原発事故の当事者である東京電力が負担しているとのことである(条件あり。詳細は後述)。
また、東電の賠償とは別に経産省の補助金制度もかつて存在していた(2013年3月31日で終了)。
福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所における事故に伴う風評被害対策の一環として2011年6月20日から経済産業省が実施していた「貿易円滑化事業費補助金制度」で、企業の規模によっての補助金の金額はことなっていたが、検査費用も適用の対象であった。
ちなみに東電が検査費用を負担することに尽力したのは日本中古車輸出業協同組合(JUMVEA佐藤博理事長)という通産省(当時)の認可団体である。
JUMVEAは、中古車輸出業界の健全な発展を目的とした団体で理事をはじめとした組合員が通常の仕事をしながら無給で活動をしている組織で、2023年3月現在の会員数は211社。
港湾地区によって発生した放射線量検査について東京電力へ賠償について働きかけを実施し検査費用の負担を実現させている。
「JUMVEAの働きかけによって輸出中古車の検査費用は現在も東電が還付(1台1500円)しています」
「無償となるのはJUMVEAの会員だけではなく、すべての輸出業者です。ただし、スタート当初からの取り決めで、原発事故以降に開業した輸出業者に対しては還付の対象となっていません。不公平が続いています」(JUMVEA佐藤博理事長)
測定結果 ほとんどの国で提出不要だった
中古車1台ずつ測定をおこなって放射線量が基準値以下であれば測定をした検査機関から車両1台1台に検査済みのステッカーや検査済証が付与される。
筆者はアメリカでJDM(25年ルールの適用でアメリカに輸入が許可された日本車。スカイラインR32、R33などが代表)の取材をした際、検査済証が貼られたクルマを見た。
SEMAショーに出展されていたカスタムカーにもこれらのステッカーが貼られていた。
その時点で震災から数年が経過したが最初見たときは少し重い気持ちになったものである。
検査機関はANCC(一社全日検)やJCTC(一社日本貨物検数協会)などがおなじみで、苫小牧や川崎、名古屋、君津などは測定をおこなった検査場となる。
なお、現在は輸出中古車の放射線量測定は義務ではなくなっている。
一社日本港運協会は2019年7月に船積み時の中古車放射線量検査について義務化撤廃を表明しており、以降は各会員店の判断とする文書を通達した。
義務化していた時には基準値を上回る車両については車台番号などを公表していたが、現在はそれも終了している。
また業界の事情通は少々キナ臭いことも教えてくれた。
「輸出先の国々も日本からの中古輸入車に対して放射線量の基準を定めているケースはほとんどなくなっていますよ」
「検査済証のステッカーを求められることも今はないですね。なぜ、検査を続けるのか不思議です。関係する組織が1台1500円×〇〇万台? で甘い汁を吸っているという話もありますよ」
「実際にしっかりとした検査をしているかどうかは別として、放射線量検査にほとんど経験がない素人のような検査員が検査をおこない、検査済のステッカーをポンっと貼っている、といううわさもあります」