ガソリン車はどうなの? 新型「トヨタ・シエンタ」 価格も走りも検証

公開 : 2023.03.12 17:35

1.3t級の車重とプラットフォーム

付け加えるなら「力強い」と感じさせる領域で走らせているなら燃費にも優しく、ドライバビリティの面でも実用性能と燃費が上手に両立されている。

ヤリスやアクアと同系プラットフォームといっても車体はヤリスより一回り大きく、車重の嵩むハイブリッドのアクアよりも200kg近く重い。

シエンタZの前席内装(内装色:フロマージュ)
シエンタZの前席内装(内装色:フロマージュ)    池之平昌信

GA-Bプラットフォームでは最も負担の大きなモデルである。だからといってサイズや重さに負けているとも思わない。というか勝負していない。

シエンタは初代からタウンユースにも気軽な運転感覚と穏やかな乗り心地を特徴とする。乗り味もユニバーサルデザインなのだ。

フットワークの軸脚は低中速域のバランスのよさに置かれ、運転していても高性能とかクルマ好きの求めるファントゥドライブは一切ない。

ならば高速走行やコーナリングは苦手か?

得意とは言えなくても、不安を感じたり速度や舵角の修正補正操作が忙しいわけでもなく、何とはなしに“収まるところに収まる”ようなタイプ。

いい意味で操る手応えがない。気楽に穏やかにドライブするにはちょうどいい。

乗り心地・シートの数について

乗り心地は和み系だが、揺れ返し等の収束性が今ひとつ。

ドタブルとした振動や突き上げはあまりなく、乗る人に優しい乗り心地だが、粘りとか据わりに欠けている。

シエンタZの2列目内装(内装色:フロマージュ/5人乗り)
シエンタZの2列目内装(内装色:フロマージュ/5人乗り)    池之平昌信

サス周りだけでなく車体全体で減衰感が乏しく、浮ついた感じが少々気になる。

もっとも、それも含めてファミリーユースのスペシャリストでもあるシエンタらしい。

市場でのライバル車としてはコンパクトサイズの3列シートという点でフリードが挙げられるが、こちらは1BOX型ミニバンの系統。

一方、シエンタは多用途型とはいえ、荷室に補助席を備えたステーションワゴンというタイプである。

代を経る毎にサードシートの居住性を改善しているが、サードシート収納がシエンタの標準と考えるべき。ちなみに2列シート仕様もラインナップする。

内燃機車か、ハイブリッド車か

同グレードにおける上位モデルとして設定されるハイブリッド車とガソリン車の価格差は約35万円。

最上級のZ系では「ACCの停車保持」の有無の違いがあるが、基本装備設定は共通である。

シエンタZ(5人乗り)の2列目シートを畳んだ状態。
シエンタZ(5人乗り)の2列目シートを畳んだ状態。    池之平昌信

WLTCモード燃費の差は、ハイブリッド車の約10km/L減。この燃費差で価格差を埋めるには、ガソリン単価が160円/Lとして11万km以上の走行距離が必要となる。

ハイブリッド車には高速・山道での動力性能のアドバンテージや燃料価格高騰にも安心というメリットがあり、圧倒的にガソリン車が経済的とも言い難い。

ただ、グレード間価格差は「X」に対して「G」が約30万円高、「Z」が約50万円高であり、ガソリン車なら同予算でハイブリッド車より1ランク上のグレードを選択できる。

グレード別の装備内容に関しては使い方次第だが、長距離用途の機会が少ない、または買い換えまでの距離がそれほど伸びないなら、ガソリン車を選択して上位グレードの選択やOPの充実を図るのも費用対効果では得策だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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