BMW 518d
公開 : 2014.09.19 23:40 更新 : 2017.05.29 17:59
高速道路で常用するような速度では、非常に静かなキャラクターへと転じる。これはX3とは異なる点で、518dはディーゼルだということも忘れさせるほど静かなのだ。ただし燃費を気にしすぎるあまり、ZF製トランスミッションは次々と変速したがる嫌いがあることは見逃せない。1500rpm以下で走行した際に軽微な振動とエンジン音がキャビンに介入することもあった。こういった場合30km/h前後でも7速で走る所を6速まで戻してあげれば、不快な音は消えてくれるのだけれど、同時に回転数を上げることになり、これでは本末転倒だ。
ただし、これらはほんの一部のシチュエーションでの話。全体を見渡せば、かなり洗練されているといった印象だ。スタート・ストップ・システムの動作も素早く、ほんの一瞬だけディーゼルなのだと気付かされる以外は、ラグジュアリー・サルーンの名に恥じない仕事に徹する。
BMWの複合サイクル燃費の公表値は22.7km/ℓということだが、われわれの計測結果は14.2km/ℓに留まった。この値から算出した航続可能距離は966kmということになると、検討するカスタマーに心の底からお勧めできるとは言い切れない。
しかし、コーナリング特性は非常に高いレベルにある。ステアリングにはほどよい重さがあり、操舵は正確。フロントの粘り強さもあるおかげで、顔色一つ変えずにハイスピード・コーナリングもこなしてくれた。カントリーロードをまずまずの速度で走っても快適性は損なわれることなく、楽しささえ与えてくれる。どのような路面状況でも、落ち着いた走りを見せてくれる様は、まさに ’オールラウンダー’ という言葉がぴったりだ。ハードな一日が終わった後に乗ったとしても、むしろ疲れを癒してくれるほどの出来栄えでありながら、長距離を走るような一日のスタートでも苦にならないといったところだろうか。
インテリアは相変わらず、静かで落ち着く空間になっている。ディテールの細やかさも印象的で、デザイン性の高さも5シリーズの特徴だ。モードを切り替えた際にはデジタル・メーターのライティングを変えてくれたりと、付加的な喜びにも満ちている。アウディA6のモダンで纏まりあるデザインには一歩及ばないが、それでも視覚的にも体感的にも優れたインテリアだと言える。キャビンやトランクの広さも、このクルマの優れた点の一つだ。